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民衆会議/世界共同体論(連載第8回)

2017-09-21 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第2章 民衆会議の理念

(3)民衆会議と議会の異同
 民衆会議と議会には共通項も多いが、相違点はそれ以上に多い。そこで、まだ理解が浸透しているとは言い難い民衆会議の実像をより明確にするために、議会制度との異同をまとめておきたい。
 まず、周知のとおり、議会は直接選挙で選ばれたメンバーで構成される代議機関であるが、民衆会議は免許等により適格性を認証された人の中から選ばれたメンバーで構成される代議機関である。
 さらに、議会は法律の制定に関わる立法機関と位置づけられるのが通常である。これはいわゆる三権分立論によって、議会を立法権を担当する府と認識する考えによっている。この点、民衆会議もその中心的な機能が立法にあることは共通である。
 しかし、民衆会議は単なる立法機関ではなく、立法を含む全権を統括する機関である。すなわち、三権分立論にはよっていない。この点で、「独裁」というイメージを持たれる恐れがあるが、全権統括機関であることは直ちに独裁機関であることを意味せず、むしろ民衆代表機関が立法から行政・司法に至る全公権力を司る民主主義の究極的な現れなのである。
 三権分立論は特に行政に全権が集中する君主制を民主化するうえでは意義あるものと言えるが、その結果として、代表機関が立法機関に限定されることは行政・司法の民主的基盤を希薄にしている。それに対し、民衆会議は立法に限らず、行政・司法も掌握することで権力全般の民主化を実現できるのである。
 ちなみに、スイスでは議会制度の下で、議会が行政も掌握する議会統治制と呼ばれる独特の制度を採用している。つまり、スイスの行政府は議会によって選出される参事会という形で組織されるのであるが、司法については別立てとなっている。その点、民衆会議は司法をも掌握する点で、より踏み込んでいる。
 この限りでは、近年の司法改革により最高裁判所の制度が創設される以前の英国で、最高司法権が議会の上院(貴族院)に属していたことと類似するが、身分制時代の遺制である貴族院が非民主的であることと比較し、民衆会議の下に司法が置かれることは、より民主的である。
 以上をまとめれば、民衆会議は立法権を有する限りで議会とも共通するが、三権分立制によらず、全権を統括する点では単なる立法機関を超えた総合的代表機関であるということになる。

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