ザ・コミュニスト

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真の変革対象は「二党支配制」

2016-03-16 | 時評

教科書的には、米国の政治システムは「二大政党制」と呼ばれている。しかし、正確ではない。米国では連邦、州、自治体を問わず、事実上民主・共和両党しか政権を担うことができない仕組みが徹底しており、その実態は両党で全米を山分けする「二党支配制」である。

米国は法的には多党制であり、両党以外の政党の結成も自由だが、小党候補者が選挙で当選に必要な得票をすることができない仕組みが作られている。「集金力=集票力」という選挙の鉄則が米国では徹底しているからである。

そうした金権選挙システムの頂点にあるのが、合衆国大統領選挙である。結果として、人材の党派的偏りと富裕なエスタブリッシュメントに属しない候補者の大統領就任は不可能な状況が作り出されてきた。

民主党で「社会主義者」サンダースが「主流派」のクリントン候補を相手に「善戦」し、共和党でも「主流派」が脱落し、極右系候補の争いとなっているのも、永年の二党支配制に対する米国民の苛立ちと不満を表現しているように思える。

サンダースは従来、無所属の上院議員として二党支配制の枠外で議席を維持していた数少ない政治家だったが、大統領選に当たっては集票しやすい民主党から立候補している。彼は「変革」を訴えているが、真の変革対象はまさに彼自身もそれに依拠しようとしている二党支配制のはずだ。

であれば、無所属のまま立候補するか、その政治信条に沿った第三政党として「社会党」を結党して立候補するか、いずれかが筋ではなかったか。この問題を素通りするなら、「サンダース社会主義」は「トランプ福祉」と同じくらい疑わしいものとなるだろう。

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極右化する米共和党

2016-03-16 | 時評

米共和党の大統領候補者指名選挙で、「主流派」と目されたルビオ候補が撤退を表明したことで、レースは首位を行くトランプとクルーズ二者の争いにほぼ絞られた。だが、これによって共和党の候補者争いは、差別主義者対宗教右派の対決構図となったことになる。

トランプを周回遅れで追走しているクルーズ上院議員は超保守的な南部バプティスト連盟に所属するキリスト教右派にして、反福祉・富者優先主義のティーパーティ運動の支持も得ている筋金入り保守強硬派である。

その政策信条には、自由貿易促進・米国愛国者法再法制化・死刑制度支持・銃規制反対・進化論否定・地球温暖化否定・人工妊娠中絶反対・国民皆保険制度反対・均等税導入・最低賃金引き上げ反対・不法移民合法化反対・LGBTの権利確立反対・マリファナ合法化反対・障害者権利条約の批准阻止・小さな政府と新自由主義支持・イスラエルとの同盟強化・イランやキューバとの融和路線反対・イスラム国に対する絨毯爆撃実施等々、アメリカにおける超保守派の政策のすべてが網羅されている(WIKIPEDIA日本語版の紹介による)

トランプとの違いがあるとすれば、宗教右派的な信条と福祉政策である。トランプはその本心はともかく、ティーパーティー派とは一線を画し、年金制度や医療保険制度などの維持も主張している。しかし「トランプ福祉」はナチスなども駆使した右派ポピュリズムの飴玉政策であり、ニューディール政策のような社会民主主義的な志向性を持つものではない。

結局のところ、トランプとクルーズのレースは、毛色と支持層を異にする極右同士の争いにすぎず、「主流派」が早々と脱落した米共和党は今や単なる保守政党ではなく、極右政党に変質しつつあると言うほかない。

指名選挙を制して本選挙に進んだいずれの共和党候補が勝利しても極右政権が成立することは間違いないだろう。「トランプ政権」なら米国史上最もファシズムに接近する政権となり、「クルーズ政権」なら米国史上最も反動的な超保守政権となる。どちらにせよ世界の拒絶反応は避けられず、米国は孤立するだろう。

※追記
クルーズ候補は、5月3日、指名選挙からの撤退を表明した。

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