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スウェーデン憲法読解(連載第26回)

2015-04-11 | 〆スウェーデン憲法読解

第一四章 自治体

 スウェーデンは連邦国家ではなく、統合国家の枠内で地方自治を保障するという点において、日本に近い体制である。現行制度は日本の市町村に相当する地方自治体と道府県に相当する地域自治体の二層構造を採る。

第一条

自治体における議決権は、選挙された議会により行使される

 地方議会に関する規定である。日本国憲法とは異なり、自治体首長については規定がない。現行制度は独任首長制ではなく、合議制執行機関である。

第二条

自治体は、一般的利益を有する地方及び地域の問題を地方自治の原則の下に管理する。これに関する詳細は、法律で定める。同様の原則の下に、自治体は法律に定める他の事務についても管理する。

第三条

地方自治は、目的に関して必要な限度を超えて制限してはならない。

 地方自治の具体的内実は法律に委ねられているが、必要な限度を超えた制限は禁じられる。地方自治の本旨を擁護する趣旨である。

第四条

自治体は、その事務の管理のために税を徴収することができる。

 充実した社会サービスの最前線を担う自治体にとって独自の徴税権は最重要の権能となる。なお、スウェーデンでは所得税が原則的に地方税化されている。

第五条

同等な財政的条件に達するために必要な場合には、自治体に対し、他の自治体の事務のための出費を援助することを法律で義務づけることができる。

 スウェーデン独自の自治体相互援助制度(地方財政調整)である。これにより、自治体間の財政格差が居住地域による不合理なサービス格差につながらないように配慮されている。この制度は財政の豊かな自治体が財政の弱い自治体のための援助資金を強制的に拠出させられる仕組みであるため、しばしば義賊ロビンフッドになぞらえて「ロビンフッド税」と揶揄されることもあるが、憲法的にも明確に規定された。

第六条

国の区域を自治体へ変更するための原則に関する規定については、法律で定める。

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