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リベラリストとの対話―「自由な共産主義」をめぐって―(10)

2014-12-07 | 〆リベラリストとの対話

8:環境計画経済について①

コミュニスト:前回の対論で、「自由な」共産主義体制では、どこまでが計画経済の範囲内なのかの振り分けが難しく、そこを誤ると経済混乱が避けられないだろうと言われました。そのお答えですが、環境計画経済という考え方から、計画経済の適用範囲は環境負荷的な産業であるというのが一応の基準となっています。

リベラリスト:趣旨はわかるのですが、その線引きはかなり曖昧で、判断に迷うでしょうね。それから、環境という視点でくくってしまうと、計画経済全体の設計はどうなるのだろうかという疑問も浮かびます。計画経済の本旨は需要と供給の事前調節という点にこそあるはずで、環境規制は第一の目的ではないですから。

コミュニスト:もちろん環境規制だけではなく、需要と供給の調節も計画経済の目的に含みますが、古典的な計画経済のように、需給調節ばかりに目を向けるのではなく、環境的持続可能性を規準とした需給調節が目指されるのです。

リベラリスト:一般論としては理解できますが、実際にはどのように計画を策定できるか、現状では環境経済学はまだ十分計量化されていないので、実際の計画策定では相当困難があると思います。環境経済学がもっと精緻なものとなるまでは、市場経済に一定の環境規制をかけるという間接的な環境政策によるほかないというのが、私の考えです。

コミュニスト:たしかに環境規準による計画が計量的に行えるかどうかという懸念はあると思います。その意味では、環境計画経済は今すぐ実行可能なシステムではなく、やはり未来に向けての提案の一つということになります。

リベラリスト:そうなるでしょうね。でも、地球環境のほうは待っていてくれませんから、未来の環境計画経済が完成するまで手をこまねいているわけにいかず、やはり現在実行可能な「環境市場経済」をまずは目指すべきではありませんか。あなたからは「緑の資本主義」などと揶揄されるかもしれませんが。

コミュニスト:もちろん、環境計画経済が完成するまで何もせずにいてよいなどとは言いませんし、おっしゃるような「環境市場経済」も否定しません。私の言う「緑の資本主義」とは、資本主義に対する何らの反省もなしに、ただ「環境対策」を万全にすればそれでよしとするような発想のことを指す言葉です。

リベラリスト:環境問題は資本主義vs共産主義の経済体制論とは別次元の問題と考えるべきでしょう。どのような経済体制であろうと、地球環境問題は優先課題です。たとえ共産主義でも環境破壊を引き起こす可能性はあります。

コミュニスト:そのとおりです。ですが、環境問題が資本主義vs共産主義の経済体制論と全く別次元の問題とは言い切れないと思います。資本主義は資本の自由に対する規制はいかなる名目があれ、忌避します。ですから、「環境市場経済」は実際のところなかなか進まないのです。環境破壊を引き起こすような経済開発優先の「共産主義」も想定はできますが、共産主義的計画経済のほうが環境規制との親和性ははるかに高いと思われます。その意味で、真の環境的持続可能性はやはり共産主義でしか達成できないと考えるのです。

※本記事は、架空の対談によって構成されています。

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