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スウェーデン憲法読解(連載第4回)

2014-12-05 | 〆スウェーデン憲法読解

第二章 基本的自由及び権利(続き)

身体の不可侵性及び移動の自由

第四条

死刑は行われてはならない。

 本条以下五か条は、人身の自由に関する規定である。意見の自由に続いて人身の自由が規定されているのは、精神に関わる意見の自由を担保する身体の自由の保障を考慮してのことと考えられる。
 筆頭の本条は死刑の禁止を定めている。死刑は言うまでもなく、生命を剥奪する刑罰であるが、生命を剥奪するには身体を何らかの形で致命的に傷つける必要があることから、死刑からの保護は究極の人身の自由とみなす考え方を読み取ることができる。

第五条

すべての人は、身体刑から保護される。すべての人は、供述を強要し、又は妨害する目的で拷問にかけられ、又は医学的に侵害されてはならない。

 ある意味で、死刑は身体刑の究極形態であるが、本条第一文は、前条で禁止されている死刑を除く身体刑全般の禁止規定である。第二文は拷問の禁止規定であるが、後半で拷問に当たらないまでも医学的な侵害も禁止している点が先進的である。拷問の脱法として、医師の手を借りて身体を侵襲するような強制措置が想定されているだろう。

第六条

1 すべての人は、第四条及び第五条に規定するものとは別の場合であっても、公的機関による強制的な身体上の侵害から保護される。さらに、すべての人は、身体検査、家宅捜索及び類似する侵害、信書又は他の内密な送付物の検査並びに電話による会話又は他の内密な通信の傍受若しくは録音から保護される。

2 第一項の規定に加え、すべての人は、本人の同意なく行われ、かつ、個人の私的事情の監視又は調査を含んでいる場合には、公的機関による個人的不可侵性への重大な侵害から保護される。

 本条は生命・身体という最も重要な法益の保護にさしあたり限定されていた前二条の保護範囲をさらに拡張する規定である。第一項第一文は、死刑・身体刑・拷問及び医学的侵害以外の公的機関による強制的な身体上の侵害を禁止する規定である。これに対し、第一項第二文と第二項はプライバシーの保護規定である。第二項は、本人の同意のない個人の私的事情の監視又は調査自体を禁止していないことには留意を要する。

第七条

1 いかなるスウェーデン市民も、国外追放されてはならず、又は国内を旅行することを妨げられてはならない。

2 国内に居住している、又はしていた、いかなるスウェーデン市民も、国籍を剥奪されてはならない。ただし、十八歳未満の子どもがその国籍に関して両親又はいずれかの親に従わなければならない旨を規定することができる。

 前二条は身体そのものの保護に関する規定であったが、本条は身体の移動の自由を規定する。第二項は子どもの家庭的な福祉を考慮すべき場合を除き、国籍保持の自由を定めたものだが、これも国籍剥奪はほぼ国外追放を意味することから本条で併せて規定されたものと読める。ただし、保護対象はスウェーデン市民に限られ、外国人については対象外である。

第八条

すべての人は、公的機関による自由の剥奪から保護される。その他、スウェーデン市民である者には、国内を移動し、出国する自由も保障される。

 本条第一文は、公的機関による自由一般の剥奪からの保護を定めている。逆に言えば、憲法に明文のない自由の保障規定として読める。第二文は、前条第一項と重複する内容を含んでいるが、スウェーデン人が旅行以外の目的で国内を移動することや、出国する自由を保障している。第二文については、外国人は対象外である。

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