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旧ソ連憲法評注(連載第19回)

2014-10-11 | 〆ソヴィエト憲法評注

第十章 自治ソヴィエト社会主義共和国

 自治共和国制度は多民族国家ソ連に特有の民族自治制度であり、ソ連解体後は、ロシアをはじめとする旧ソ連諸国に引き継がれている。

第八十二条

1 自治共和国は、連邦構成共和国の一部分である。

2 自治共和国は、ソヴィエト連邦および連邦構成共和国の権利の範囲外で、その管轄に属する問題を自主的に解決する。

3 自治共和国は、ソ連憲法および連邦構成共和国憲法に適合し、自治共和国の特殊性を考慮した自分の憲法をもつ。

 本条にあるとおり、自治共和国は独自の憲法を持ち、15の連邦構成共和国の内部に設定される少数民族主体の自治体であった。

第八十三条

1 自治共和国は、ソヴィエト連邦および連邦構成共和国の国家権力および行政の最高諸機関をとおして、ソヴィエト連邦および連邦構成共和国のそれぞれの管轄に属する問題の解決に当たる。

2 自治共和国は、その領土における総合的な経済的、社会的発展を保障し、その領土におけるソヴィエト連邦および連邦構成共和国の権限の行使に協力し、ソ連および連邦構成共和国の国家権力及び行政の最高諸機関の決定を実施する。

3 自治共和国は、その管轄に属する問題について、連邦または共和国(連邦構成共和国)に属する企業、施設および団体の活動を調整し、監督する

 本条は自治共和国の権限規定であるが、これは連邦構成共和国に関する第七十七条に相当するもので、自治共和国は自治体といいながら、ソ連および自治共和国が内包される連邦構成共和国の名代の役割を負わされた。

第八十四条

自治共和国の領土は、その同意がなければ変更されない。

 自治共和国の領土の保障規定である。連邦構成共和国と異なり、包摂自治体のため、国境線の概念はなかった。

第八十五条

・・省略・・

 自治共和国はソ連全土に存在したわけではなく、77年憲法制定当時は連邦構成共和国のうち、ロシア、ウズベク、グルジア、アゼルバイジャンの4共和国内にしか設定されておらず、本条にその名称が列挙されていた。

第十一章 自治州および自治管区

 自治州及び自治管区は、自治共和国よりも権限の限られた小さな民族自治体であった。

第八十六条

自治州は連邦構成共和国または地方の一部分である。自治州にかんする法律は、自治州人民代議員ソヴィエトの提案にもとづき、連邦構成共和国最高会議が採択する。

 自治州は独自の立法機関を持たなかったため、それが属する連邦構成共和国の最高会議が委託により、代行立法していた。

第八十七条

・・省略・・

 77年憲法制定当時自治州が設定されていたのは、ロシア、グルジア、アゼルバイジャン、タジクの4共和国であり、本条にその名称が列挙されていた。

第八十八条

自治管区は、地方または州の一部分である。自治管区にかんする法律は、連邦構成共和国最高会議が採択する。

 自治管区は自治州よりも権限の限られた小さな民族自治単位であり、立法はあげて連邦構成共和国最高会議が行なっていた。

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