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平成版畿内‐出雲同盟

2014-10-05 | 時評

5日に執り行われた出雲大社禰宜の千家国麿氏と高円宮典子女王の婚儀は、歴史的にも現在的にも象徴的な意味がある。歴史的には、出雲‐畿内同盟の再現前である。

日本神話のエピソード中でも有名な「出雲の国譲り」には様々な解釈があるが(拙見はこちら)、いずれにせよ、かつては独立した王国を形成していた出雲王権が畿内王権に吸収統合され、より強力な王権が再構築されたことの反映である。その結果として、畿内王権に出雲系宗教が摂取され、宗教的な刷新も生じた。

こうした王権統合の事実は歴史の過程で埋もれていき、出雲王家も畿内王権に服する出雲国造家に格下げされ、さらに国造制廃止後は、出雲大社祭祀者として地方宗教権威に収斂していった。

それが千数百年を経て、畿内王家末裔の女性皇族と旧出雲王家末裔である次期出雲大社宮司の通婚という形で、再び表に現れてきたのだから、歴史的には感慨深い驚きがある。公式発表では、政略婚ではなく、あくまでも二人の自由婚とされているが、それが真実としても、その象徴的な意味合いに変わりはない。

ただ、政治的に見ると、この平成版畿内‐出雲同盟には危険な面がなくはない。これによって、現憲法でひとまず否認された天皇制の神権的な側面が再活性化されてくる恐れもあるからである。

もっとも、今般の通婚では天皇の皇女ではなく、傍系の女性皇族が降嫁するだけであるので、考え過ぎとの見方もあろう。しかし、皇室の政治利用を目論む勢力にとっては利用価値のある慶事であることも間違いない。

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