安倍改造内閣の女性閣僚と女性与党幹部が日本のネオナチ政党(議会外政党)のリーダーと写真に写っていた問題は、ネオナチについて周知されていない日本国内ではケアレスミス程度の扱いであるが、海外ではそれだけで政治生命を絶たれるであろう単なるスキャンダルを超えた重大な意味を持っている。
当人らは「知らなかった」と抗弁するが、公人が共に写真に納まる相手に頓着しないというのは、言い訳にならない。全く個人的な秘蔵写真ならいざ知らず、公開される可能性のある写真で一緒に写る相手の吟味は当然である。もし本当に知らなかったのだとしても、ネオナチの来客と間接的な人脈はあったという事実までは否定できない。
ナチズムを最凶とするファシズムは、保守勢力の反動化によって呼び込まれる現象であり、まさに知らないうちに政界に忍び込み、増殖していくものである。このことは、ネオナチのような派生的亜種に限らず、本家本元ナチスも同様であった。
昨今、日本では保守勢力の反動化著しく、安倍政権はそうした傾向を象徴する政権であるが、比較的色を薄めていた改造前に比べ、改造内閣・与党執行部は反動色を鮮明にしたことで、おそらく戦後最凶右派政権の陣容となった。逆走の戦後日本史はまた一つ新たな段階に踏み込んだと言えよう。
もう一つの新しい特徴は、そうした反動化の前面に女性たちが登場していることである。今般改造内閣の目玉は史上最多5人の女性が入閣したことである。それだけとれば「進歩的」とも言えるが、問題は5人の顔ぶれだ。過去の言説からみて、5人中「ネオナチ」写真大臣を含む少なくとも3人は明らかに右派、1人も準右派で、イデオロギー的に安倍首相とも近い。
実はこうした女性の右傾化は日本だけの現象ではなく、フランスでも議会政党である極右国民戦線の現党首は女性であるし、ノルウェーでも現在連立与党入りしている右翼政党・進歩党の党首は女性である。しかし、日本における女性の右傾化はかなり際立っているように思える。
こうした女性たちは、女性でありながら反フェミニズム言説に与するなど、女性の解放そのものには関心がなく、男性的論理を血肉化することで、日本の男性優位社会における例外女性としての地位を確保しようとしている。右傾化もそうした彼女たちの立身戦略と言えるのかもしれない。
しかし、そうして結果的には“男女共同参画”での保守反動化が進むことで、ネオナチのようなものが呼び込まれ、増殖していく危険も高まる。このまま進めば、向こう10年以内にネオナチ政党の議会進出が現実のものとなるかもしれない―。そんな脅威を感じさせるネオナチ・ショットであった。