今、就職戦線は非常に難しい局面を迎えていると言わざるを得ません。有効求人倍率こそ高い水準を推移しているものの、中小も含めた企業の、採用者の「質」重視傾向が高まっているため、失業率の改善になかなかつながらないのが現状です。
そういう意味でも、就職の際の武器を増やすことは重要です。少なくとも、デスクワーカーになるつもりならPCでの文書作成が出来なければお話になりません。「携帯電話があればPCは要らない」なんて主張は、少なくとも就職活動中の場合、モバイルサイトを作っている連中の”願望”でしか無いことを、今一度肝に銘じるべきだと思います。
さて、そういう点から見ると、今回マイクロソフトがやろうとしている活動は、実に理にかなったものであると言えます。
マイクロソフト、ITを活用した若者の就労支援プログラムの提供を開始 PC Watch
マイクロソフト株式会社は、無業状態にある若者の就労を支援するために、2010年1月から「ITを活用した若者就労支援プログラム」を開始する。
-中略-
今回、マイクロソフトが地域若者サポートステーションを受託するNPOと連携し、2010年1月から2011年12月末までの2年間、就労に役立つITスキルと、ITスキル習得によって若者たちの自信を醸成することで、就労に導く。
さて、このような無料での事業が行われる背景には、当然ながら企業側の意図が多分に含まれています。いくら慈善事業に見えようと、何割かのプロモーション、もしくは打算が含まれていると見るべきです。それを表すところを元記事から引用するならば、今回の事業のポイントはやはりここから読み取れるのではないかと。
提供するITスキルは、講習1:Word/Excel/PowerPointを活用した文章作成、講習2:Accessを活用したデータ管理、講習 3:Webサイト構築を予定している。さらに、就労支援として、キャリアカウンセリング講座、コミュニケーション講座を提供し、個別相談やテーマ別ワークショップ、職場体験などの就労支援の提供も計画している。
つまり、自社製品の扱いに長けたものを量産することによって、企業における他社製品への移行を防ぐこと、自社製品のシェアの維持をはかりたいわけです。人件費その他諸々を含めて考えたときに、オフィススイートのスイッチコストがどれだけペイできるかというのは、実のところ難しい問題です。
リボンインターフェイスに変わることで、評判を落としたMS Officeの習熟社を増やし、企業に送り込むと言うことは、同時に移行に関する社内インストラクターを大量生産することと同じ事。また、単純にMS Officeに一番慣れ親しんだユーザーを増やすことだけでも、マイクロソフト的には十分大きな意味があるのです。
こういう事は、基本的に金のないOSS陣営や、金はあってもまともなオフィススイートを持っていないGoogleには出来ないこと。また、「PCが出来るだけでは意味は無けれど、出来ないよりはずっと良い」という観点から、意義も十分にあると思います。しかしながら、今回の会見に何となく白々しさを感じたのは、私だけではないでしょうねえ。