■■連載小説 経営コンサルタント竹根好助の先見思考経営 11
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【本書の読み方】
本書は、現代情景と階層部分を並行して話が展開する新しい試みをしています。読みづらい部分もあろうかと思いますので、現代情景部分については【現代】と、また過去の回想シーンについては【回想】と表記します。
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【現代】
竹根は、政治とか思想とかにあまりとらわれない性格のようだと、幸は感じた。経営コンサルタントという中立な立場でものを見る人には、それらはかえってマイナス要因となるからであろう。
「育さんと初めてあったのは一九七〇年の十二月ですから、もう十二、三年になりますね」
「そうそう、先生がまだサラリーマンをしていた頃で、まだバブルも始まらず、どちらかというと不況ムードの最中でした」
「ロスからシカゴへ飛んだとき、眼下に見えるシエラネバダ山脈や広大に広がる砂漠、スケールの大きさを実感できましたね。荷物が戻るまで八日もかかり、ずいぶんと不便を囲み、怒りよりも、アメリカのそのスケールの大きさを示すような時間のたおやかな歩みを感じました」
「たおやかとは、育さんらしい文学的な表現ですね」
「でも、アメリカのビジネス界のすさまじさ、先生からお聞きしたマネジャー以上の人たちの自己研鑽や仕事に対する姿勢は、たおやかな世界の反対極でしたね。たおやかな人たちとの落差というか、距離感もまたアメリカなのですね」
「そういえば、あのときに買った背広やワイシャツはどうしています?」
「背広は、未だにどこかにあるはずです。ワイシャツはさすがにあちこちのサイズが合わないので、帰国後すぐに女房が捨てたと思います。とにかく、あのときは、先生の献身的とも言えるご厚意は、本当に感謝、感謝でした」
幸は歩を止めて竹根に向かって深々と頭を下げた。周りの人が何事が起こったのかと振り返っているのを見て、竹根が慌てて制した。
「先ほど、育猛君と話をしました。なかなかいい青年になりましたね」
「いや、理屈だけはいっぱしなことを言うけど、経営のことも仕事のことも何もわかっちゃいないんです」
「私は、彼と話をしていて、アメリカで私に話してくれた、育さんのあの頃を思い出しましたよ。会長がまだ社長で、育さんは常務取締役になりたてだったよね」
「何しろ、まだ二十七、八で、親父が社長だから常務取締役だけで、会社ではペーペーだったからね」
合縁奇縁というが、二人とも人の巡り会いも不思議な偶然のなせる技であるが、お互いに気心までが合致することは奇跡とも言えるとそれぞれが思った。
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