Q:3月の地震は日本経済に大きな爪あとを残していますが、一方、義援金も相当集まっています。今月は義援金に関する税務を教えて下さい。
A:税務上、義援金は寄附金という扱いになります。寄附金の税務ですが、法人では原則として損金計上できませんが、公共性の高い所定のものは全額または一部を損金計上できます。
Q:今回の地震にかかるものは損金計上できますよね?
A:日本赤十字社や中央共同募金会、最終的に国や地方公共団体に帰属するものであることが趣意書等で確認できるものは全て全額損金となります。また、各新聞社が募る義援金も同様です。
Q:個人ではどうなりますか?
A:確定申告において寄附金控除が可能です。年間2,000円を超える額が対象で、納税額が「支払額-2,000円」に税率を掛けた相当額が減額されます。対象となる寄附金は今回の義援金や、公共性の高いもの、所定の政党寄附金です。
Q:領収書等は必要ないのですか?
A:当然必要です。申告書に添付します。電子申告により提出を省略した場合は3年間の保存義務があります。また、宛名が本人名義であることも必要です。日本赤十字社では数名以上がまとめて一括寄付した場合でも、対象者の氏名・住所・金額をデータ送信すれば領収書を分割発行するようです。領収書の発行されないコンビニやスーパー店頭あるいは街頭募金は寄附金控除の対象外です。
Q:数ヶ月前、伊達直人(またはタイガーマスク)を名乗るランドセルの寄付などがありましたが、これは寄附金控除の対象となりますか?
A:残念ながらなりません。寄附金控除は金銭を所定の公共団体に、所定の目的に充当するための寄付を行うことが対象です。
Q:その寄附金の行方ですが、日本赤十字社に寄付しても、その寄附金がどこにどれだけ配分されるのかは、赤十字任せとなるわけですよね?
A:そうです。赤十字に限らず、義援金の配分について寄付者に決定権はありません。どうしても津波で壊滅状態となった自治体への寄付をしたいなら、いわゆる「ふるさと寄付金」あるいは「ふるさと納税」といわれる制度が利用できます。寄附金とほぼ同額の国税と地方税が減額される制度です。
Q:出身地でない自治体への寄付でもOKですか?
A:本制度は寄付をする自治体は出身地であることを求めていません。どこの自治体に寄付するかは、本人が決めることです。
この制度であれば、援助したい自治体に直接寄付できる上、税務上も有利になります。なお、被災した自治体のうち、一部は役所が機能していないところもあり、機能していても目先の対応で多忙なところもあります。既に役所が正常に機能している自治体ならいいのですが、混乱している自治体への寄付は数ヶ月以上後に問い合わせるのがよろしいかと思います。
なお、東北地方の自治体ではふるさと納税とは別に、今回の地震に対する義援金と寄附金を分けて募っています。います。前者は被災者に対する生活支援も活用し、後者は災害の復旧及び復興事業に活用し、どちらも税法上の寄附金控除の対象となりますが、ふるさと寄附金(ふるさと納税)とは別です。そもそも寄付は見返りを求めないものが寄付であり、減税目的で寄付を行うことはどうかと思います。
Q:仰せの通りですね。ありがとうございました。
■ 回答者 谷澤 佳彦 氏
谷澤佳彦先生は谷澤佳彦税理士事務所の所長で、税理士業、経営士業務を中心にご活躍中です。また、最近は「日本経営士協会 首都圏支部長」として活躍なさっております。このシリーズでは税金について税理士として、ご活躍の谷澤佳彦先生、質問は経営士俵一史先生が致します。
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