■■連載小説 経営コンサルタント竹根好助の先見思考経営 10
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■■ 1 親子のいさかい 6
【本書の読み方】
本書は、現代情景と階層部分を並行して話が展開する新しい試みをしています。読みづらい部分もあろうかと思いますので、現代情景部分については【現代】と、また過去の回想シーンについては【回想】と表記します。
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【回想】
「育雄常務、どうだろう、一度アメリカに遊学に行ってこないか?遊学といっても、最長でも一ヶ月程度だが・・・」
「とうさん・・・、社長、本気?ですか?」公私の区別をするようにしている。
「とうさん・・・、社長、それはいいかもしれませんね。どうせなら、アメリカだけではなく、印刷といえばドイツにも行ってきたいので、一ヶ月ほど欧米視察をさせてください」
「うん、おまえ、常務ならきっと何かネタを仕入れてきてくれると思う。ラッキーの明日がかかっているのだから、そのつもりで行ってきてくれ。今なら、まだそのくらいのカネは何とか工面できると思うが、念のため、どのくらいのカネを用意したらよいのか見積もりを取ってくれ」
「わかりました、社長!」
「行くのなら早い方がいいよ。年末近いがすぐに行ってきたらどうか。うちと取引のある福田商事もアメリカに駐在事務所を開設したそうだから、向こうで面倒を見てくれると思う。担当の取締役とはゴルフを時々やる間柄なので、今日明日にでも会って、頼んでくるよ」
「そうしてください。福田商事からはいろいろな物をズーと仕入れてきているので、そのくらいの便宜は図ってくれるだろう」
「アメリカといっても駐在員事務所があるのはニューヨークだそうだ。聞くところによると二十代の若造が行っているらしい。会ったことはないけど、少々頼りない気がすな。だけど西も東もわからない常務が一人で行くよりはましだろう」
「今からアメリカとヨーロッパを行くとなると、ちょうど正月にぶつかりますね」
「日本のことばかりを見ていてはだめだよ、常務。欧米は、クリスマスの時期は会社も休みになり、十二月も、二十日を過ぎると行っても仕事にはならないよ」
「そうですよね。そんなことをすっかり忘れていた。まだまだ俺の視野は狭いのだな」
「ほう、それがわかっているだけでも優秀だよ。その狭い視野を広げるには、アメリカに行くのがベストだ。あそこは広い、とにかく広い。人間も大きい、いや大きい人もいる!身体だけではなく、考え方が」
「アメリカか、どんなところなのだろうね。日本から、アメリカに出張するなんていう人は、まだそれほど多くはないからな。それにしても、そんなアメリカに二十代で駐在員になっている人って、どんなやつなんだろう。福田商事のような大会社の駐在員なので、相当切れ者なのだろうな」
一旦ふくらんだ夢が、まだ見ぬ若者のことを考え出したら、少々不安になってきた。その男とうまくやっていけるのだろうか?
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