10月も後半になり、九州もだんだんと過ごしやすい陽気となってきました。
ツアー第五週目の今週は、
10月21日(月) [佐賀県]佐賀東高校・高志館高校 佐賀市文化会館
23日(水) [福岡県]高稜高校 同校体育館
24日(木) [熊本県]小国高校・小国中学校・南小国中学校 小国高校体育館
25日(金) [大分県]中津南高校 同校体育館
での公演でした。
佐賀東高校・高志館高校
三年に一回の二校合同の演劇鑑賞会。風の公演も三年振りとなります。
佐賀東高校の演劇部は全国大会に何度も出場しており、劇団員の蒲原智城の母校でもあります。
「心臓が飛び出すほど緊張しています。」と、司会の高志館高校の生徒会長さん。しかし、舞台に上がると堂々とした態度で、客席を盛り上げてくれました。
公演は、開演前の賑やかさとはうってかわって、集中した視線を終始舞台に向けてくれていました。
カーテンコールでは、「人との絆と思いを大切にしていきたいと思いました。」という素敵な感想とともに佐賀東高校の演劇部の生徒さんと司会をしてくれた高志館高校の生徒会長さんから花束をいただきました。
終演後には、高志館高校の担当の先生と生徒会長さんが楽屋を訪ねてきてくれました。
一方、ステージ上では佐賀東高校の演劇部のみなさんが舞台見学を行っていました。顧問の先生も一緒になって、細かいところまで隅々と舞台装置、小道具などを熱心に見学していました。その後、座談会も行われ時間いっぱい楽しんでくれていました。
この日の公演が、両校のみなさんの大切な思い出となってくれることを願っています。
高稜高校
北九州市の二島駅前の小高い丘の上にある高稜高校の体育館での公演です。こちらの学校は二年前の『ジャンヌ・ダルク』以来、7回目の風の公演でした。
坂道を登り、二階にある体育館のため、公演前日に搬入を行いました。このときには、男子バスケットボール部の生徒のみなさんが、部活動後にも関わらず、お手伝いをしてくれました。
作業を終えると、担当の先生が「こんなに大変だとは思っていませんでした。でも、これが明日舞台になるんですね。」と、息を切らせながらも、生徒がこれから演劇に触れることへの期待を話してくれました。
本番当日、生徒のみなさんは、その先生の期待に応えるかのように、細かいところにもよく反応しながら、『Touch』の世界を楽しんでくれていました。
カーテンコールでは、生徒会長さんの「今日の演劇を見て、仲間との絆を大切にしたいと思いました。」という言葉とともに、生徒全員が立ち上がり、大きな声で「ありがとうございました!」とお礼を受けました。生徒のみなさんの思いに、こちらこそありがとうございました。
終演後の舞台撤去には、野球部、サッカー部、バレーボール部、剣道部、軽音部、生徒会の生徒のみなさんが元気に手伝ってくれました。そのおかげで、予想していた以上の速さで撤去が終わりました。ありがとうございました。
小国高校・小国中学校・南小国中学校
小国では、毎年合同で芸術鑑賞会を行っており、こちらも二年前の『ジャンヌ・ダルク』以来の再会となりました。
地元の木材を使って建てられた、あたたかみのある木造の体育館が今回も私たちを迎えてくれました。体育館の木の温もりと鉄とコンクリートの無機質さを感じさせる『Touch』舞台装置とが合わさり、独特の雰囲気を感じる劇場に変わりました。
雨のなか、バスに揺られて、中学校の生徒のみなさんが続々と高校の体育館に集まってきました。高校で昼食を済ませて開場を待ちます。
「教室で生徒に聞いてみたら、みんな前回の『ジャンヌ・ダルク』の事を覚えていて、今日も楽しみにしていました。」と、担当の先生が開演前におっしゃっていました。その言葉を聞くと、自然と力がみなぎります。
本番は、生徒のみなさんの無邪気な笑い声に包まれて、あたたかな空間が体育館に広がっていました。ラストシーンでは、あちこちから鼻をすする音が。きっとひとりひとりのなかで、なにかが起こってくれていたのではないでしょうか。
終演後の舞台撤去には部活動の生徒のみなさんがたくさん参加してくれました。
今回の『Touch』の話だけでなく、二年前の『ジャンヌ・ダルク』の話もしながら、あっという間に時間が過ぎていきました。
また、みなさんの元気な姿に会えることを願っています。
中津南高校
中津南高校は、三年ぶり5回目の風の上演でした。
こちらの学校は芸術に触れるという目的に加えて、人権教育の一環としての取り組みとして芸術鑑賞を行っています。
静かに食い入るように、熱心に視線を注ぐ生徒のみなさんの姿が印象的で、彼らの力強い拍手のなか幕を閉じました。
カーテンコールでは、生徒会長さんが「この先、孤独を感じたり、壁にぶつかることがあると思います。その時は、今日の演劇を思い出して、仲間との繋がりを大切に歩んでいきたいと思います。」と、熱いメッセージをみんなの前で語ってくれました。
終演後には、担当の先生が顧問をしている野球部と卓球部、柔道部、剣道部、生徒会、そして有志の生徒さん、本当にたくさんのみなさんがお手伝いをしてくれました。さっきまで見ていた公演が自分にとって何なのか、それぞれの言葉を劇団員に伝えながら、作業をしてくれました。
公演の記念に作った色紙を受け取ってくれたのは、カーテンコールで熱い感想を述べてくれた生徒会長さん。なんと名前は太一くん。太一から太一へ(笑)!
最後はみんなで記念写真。この日感じたこと、考えたことが、みなさんひとりひとりのこの先の人生の力に変えていってくれたらと思います。ありがとうございました。
今週は、どの学校もここニ、三年の間に風を上演した学校ばかりの再会の週でした。
そのなかで、印象に残った先生の言葉があります。
「ここの子たちは、芸術に触れる機会がほとんどありません。だからこそ、こうして芸術鑑賞会をとおして、本物に触れることができることは、子どもたちにとって大切なことだと思いますし、彼らを豊かにしてくれると思います。」
その言葉から、私たちが誰に対して、そしてどんな人たちの思いの重なり合ったなかで、一回の公演をしているのかをあらためて感じました。
今、若い観客たちに演劇を見せることの意味、若い観客たちが演劇を見ることの意味は何なのか。
一回一回の公演をとおして常に考え、その場で彼らとつくり続けていきます。
来週はいよいよ旅の折返しを迎えます。
文:フィリップ役 佐藤勇太