9月下旬から始まった『ジャンヌ・ダルク』の九州ツアーも、気が付けば2か月たち12月に入ろうとしています。
トップの写真は、長崎県の小浜高校にて終演後の撤去作業を手伝ってくれた有志の生徒さんです。
第9週目は、
11月20日 (月)中津東高等学校
11月21日 (火)中津北高等学校
11月22日 (水)大分工業高等専門学校
11月24日 (金)小浜高等学校
大分から長崎へ九州を横断する中で、新たな出会いや再会、そして風が歩み続けてきた道のりをより鮮明に感じることのできた1週間になりました。
中津東高等学校
最初の学校は、シャルル7世を演じる石岡和総の母校での公演です!
前回の『ハムレット』と同様に公演中も終演後も、とても元気な姿を見せてくれました。
なんとお手伝いに参加してくれたサッカー部のコーチを務める先生は、石岡の同級生でした。開演前の挨拶で担当の先生がそのことを伝えた瞬間、客席の驚きの声がとても印象的でした。
公演は、とても自由に演劇を楽しむ姿を失わずに、終始、真剣な眼差しを舞台に注いでくれました。学校の雰囲気は、在校する生徒さんや先生方によって常に変化していくものだと思います。しかし、この日の公演は以前、ハムレットを上演した中津東高校を鮮明に思い出すほど、変わらぬ表情に出会わせてもらいました。
写真は卒業生から在校生に色紙の受け渡しです。
石岡自身にとっても、この体育館で在校中にハムレットを観劇し、風への入団を決心した彼のスタート地点です。あの時、客席にいた石岡と共に舞台に立っている喜びと、その彼が劇団員として高校生の前に立っているこの時間の流れが、風の巡回公演を行い続けるとても大切にしたい意義を発見させてくれました。
終演後のお手伝いも、当初サッカー部の生徒さんと聞いていましたが、野球部や女子バスケ部と快く参加してくれました。先生方もそんな彼ら、彼女たちの背中を見つめながらも、十代に負けない姿で劇団員と共に動いてくれました。
そして中津市2日目は
中津北高等学校
朝、学校に到着するとすでにお手伝いの生徒さんが体育館で待っていてくれ、「公演楽しみにしてました!」と寒さを吹き飛ばすほどの笑顔で劇団員を迎えてくれました。
開場すると体育館に広がる驚きの声が、朝の時間をギリギリまで参加してくれた生徒さんだけではなく、学校全体が演劇を待ち望んでいてくれていたことを感じさせてくれました。公演は朝の笑顔と打って変わってひりつく様な緊張感を持ちながら、ジャンヌの姿を目で追っているようでした。
カーテンコールでは、担当の先生から”中津北流のお礼”を全校生徒と先生方から盛大な拍手でいただきました。
そして、終演直後の退場指導を行う先生が一言「すごい舞台だね。ここに置いておいてほしいね。」と生徒さんたちに語り掛けている声に、舞台裏にいた劇団員はとても嬉しく、また公演の終わりと別れが近づいている寂しさを共有した気がします。
先生の言葉に背中を押されてか、急遽、舞台裏見学が行われました。
撤去作業には朝に参加してくれた皆さんだけでなく多くの生徒さんが参加してくれました。劇団員が事細かに説明する必要のないくらいに、自分たちでどのように運ぶべきかを話し合いながら、考えて動いている姿がとても印象的でした。
大分工業高等専門学校
雨がパラパラと降るなか、この日も朝から学生会の皆さんが大道具搬入作業を手伝ってくれました。それも一限の授業のない学生は、搬入が終わるまで参加してくれ、授業のある学生さんは少し後ろ髪引かれるような姿を見せてくれました。
高専での公演は一般の高等学校と異なり5年間の一貫教育があるので、普段の公演よりもより幅の広い年齢層との出会いがあります。1年生から3年生の他校と変わらぬ高校生らしい反応から、4年生・5年生のより批評的な視線も相まって互いに楽しむことや、真剣に見つめることを再確認させあいながら舞台を見つめていました。終演後の挨拶では学生会長さんが「僕にはジャンヌのように神の声は聞こえませんが、学生たちの声をよく聞いて学校をより良く出来るようにしていきたいです。」と、いま観た演劇をすでに自分のものにし、真摯に学生に向き合おうとする立派な姿に出会わせてくれました。
終演後の撤去作業もまた学生会の皆さんが参加してくれ、自分たちで声をかけ合いながら他の人の作業をしっかりと見つめ、進んで手を出し協力的に作業を行っていました。演劇は俳優や演出、照明や音響、舞台美術と様々な人間が関わる芸術だからこそ、私たちも日々の作業についても意見の出し合いや、協力することの重要性をお手伝いの皆さんにも伝えたいと考えています。
普段の姿に戻った体育館。『ジャンヌ・ダルク』の公演を共に創り、お互いの胸の中に今日という日を持ち続けたいと願い座長の柳瀬は最後の挨拶をいています。
そして写真には残せませんでしたが、こちらの学校には中津東高校で石岡の担任をされていた先生が、教え子の姿を観るために来てくれていました。
小浜高等学校
第9週目、最後の学校は長崎県の小浜高校です。なんとも嬉しいことにこちらでも朝の寒いなかから搬入作業に沢山の生徒さんが参加してくれました。開演直後から演劇との出会いに驚きの表情を持ちながらも、とても集中した視線を舞台に注いでくれていました。
何よりもジャンヌに最後に審判を伝える台詞では、とてもショックな表情とジャンヌの内面を必死に感じ取ろうとしていた生徒さんたちがとても印象的でした。
舞台撤去の時には観劇の時と同じくらいに集中し、楽しみながら作業していた姿が劇団員に大きな喜びを与えてくれました。ジャンヌ役の高階と話したいと、有志で最後までお手伝いをしてくれた生徒さんを加えると50名近くのお手伝いがありました。
全校生徒230名もいない小浜高校ですので、1/5の生徒さんがいたことに後になって驚かされました。
ジャンヌ・ダルクの九州ツアーも折り返しを過ぎ、来週で11月が終わります。
第9週目を終え、自分たちが舞台に立つことから演劇の創りだす様々な可能性に出会わせてもらった一週間になったと実感しました。沢山の出会いがあり、常に別れのなかで巡回公演を突き進んいきますが、必ずどこかで出会えることを信じ次の公演の地に向かっていきます。
生徒を見守る先生方の姿や願いを真摯に受け止め公演を続けることが、見守られていた存在が舞台に立ち、見守る存在になっていることに驚きと責任をより強く感じました。
風は冬の寒さに負けることなく九州を駆け抜けていきます。
風のバスとトラックを見つけたらいつでも声をかけて下さい!再会の日を心待ちにしています。
アンセラン/ピエール・コーション
白石圭司