ようやく始まった『Touch〜孤独から愛へ』のツアーは二週目を終えました。
早いもので10月も下旬になり、九州でも秋を感じる気温になりつつあります。
『Touch〜孤独から愛へ』第2週目は
10月21日(水)長崎県 諫早東高等学校 愛の未来文化センター
10月23日(金)大分県 大分雄城台高等学校 ホルトホール大分
にて公演を行いました。
10月21日(水)長崎県 諫早東高等学校
雲仙市愛野町に、昨年開館したばかりの【愛の未来文化センター】での公演でした。
諫早東高校では、今年度初めて全校生徒が集まる行事が芸術鑑賞という事もあり、早くから先生方が会場に集まり生徒さんのための椅子を並べ、入場の際の検温と手指の消毒用のアルコールの用意と万全の態勢を準備している姿が印象的でした。
地元に造られた新しい劇場に入場した全校生徒200名の皆さんは、少し緊張した様子を見せながらも、新しい劇場とこれから始まる演劇の舞台装置を目にしながら話題が尽きない様子でした。
本番が始まり、劇場が暗くなる数秒前まで演劇の始まりを待ち望むかのように、ザワザワと話していた生徒の皆さんも、いざ舞台が始まり俳優の姿が見えると、打って変わって真剣な表情と無邪気な笑いに包まれた公演になりました。
終演後に校長先生と座長の柳瀬が話をした際に「うちの生徒は感情を抑えきれない子が多い、だから身につまされる思いでした」と目に涙を浮かべながら握手をしたそうです。
校長先生の握手は、観劇後の生徒の姿から演劇を通して彼ら彼女たちの未来を願うメッセージに感じられます。
実はこの作品を選ばれた経緯は、担当をされている先生が昨年、島原商業高校にて『Touch』を下見した際に、学校に戻ってきた足で真っ直ぐ校長室に向かい『Touch』をやりたいという話になったそうです。
最後の写真は校長室に駆け込み、私たち風と諫早東高校の皆さんとの出会いを作り、劇団と学校が一緒になってみんなが集まれる観劇の場を、学校を代表して私たち風と共に公演当日まで歩んでくれた担当の先生です。
10月23日(金)大分県 大分雄城台高校
大分雄城台高校は風の公演は初めての学校になります。そして3年に1回の芸術鑑賞も演劇を行うのはなんと10年ぶり位になる学校です。そしてこの学校では高校2年生が9月に演劇発表があり、その行事の前にプロの演劇に出会わせたいと昨年から話を進めていました。しかし、コロナ禍ということもあり、芸術鑑賞の時期を延期しての実施になりました。
密を避けるために2回に分けての公演となり、午前の回は3年生、午後の回は1・2年生の観劇です。
前日の夜に、私たちが舞台の仕込み作業を行うのと同時に、担当の先生はコロナ対策の検温機やアルコール消毒用のスプレーを準備されていました。
午前中の3年生の公演はとても真剣で静かに舞台を見つめ、張り詰めた緊張感の中で『Touch』という舞台に一人ひとりが没頭しているようでした。
カーテンコールの挨拶では、「私たちもこれから沢山の困難や苦労が待ち受けていると思いますが、今回の観劇を機に改めて自分たちの将来を見つめ直そうと思います」と、3年生らしいしっかりとした姿と言葉を俳優たちに送っていました。
午後の公演は1・2年生の回という事もあり、開演前の担当の先生の挨拶も「リラックスして楽しんで観てください」と、観劇する生徒さん一人ひとりを先生方が見つめて声をかけている様でした。
本番が始まると、午前中の先輩の姿を観ていたかの様に静かな観劇姿でしたが、リラックスし、時にクスクスと笑いながら楽しそうに観劇していました。
終演後には来年の演劇発表に向けて、文化委員の生徒さんが代表して俳優への質問が行われました。
来年、演劇発表を控えた1年生が、来年はこの観劇を次は自分たちの経験の場を創ることに生かしてくれればと願います。
そして大分雄城台高校では終演後の舞台裏見学も行い、多くの生徒さんが舞台に上がっていました。
例年、九州ツアーでは多くの学校がこの舞台裏見学を行っていましたが、今年のコロナ禍に於いて私たちも実施の学校が少なくなると覚悟していただけに、この様なかけがえのない時間が本当に大切な経験をお互いに生み出していると実感しました。
参加人数が多かったので、急遽、ハロルド役の柳瀬による客席での座談会も行われ、撤去されていく舞台を眺めながら熱心に言葉を交わしている印象でした。
こちらの最後の写真も担当をされていた先生が終演後の文化委員を見守る姿です。
「うちの生徒は真面目な子が多い」と伺いました。しかしハロルドがフィリップに言う様に「表に出していないだけ」と、内に抱えている様々な感情や感覚に、今回の『Touch』が届いていると感じさせてくれた大分雄城台高校のハロルドの後ろ姿です。
『Touch〜孤独から愛へ』のツアーが2週目を終え、日曜日には次の宮崎商業高校の仕込みが始まります。
そして、西日本地域ではびわ湖芸術文化振興財団主催で『ヘレン・ケラー〜ひびき合うものたち』のバリアフリー演劇が、びわ湖碧水ホールにて行われています。
例年であれば、平日は毎日の様に、時には2週間止めどなく本番を行なっている風のツアー。
コロナ禍の時にあって劇団と共にコロナへの対応策を考え、消毒や検温などの準備を行い、先生方と一緒になって観劇の場を作っていると実感するツアーとなっています。そして今週の劇場を利用しての公演では、生徒さん自らが自分たちの椅子や手すりを消毒している姿が2校共にありました。
自宅待機やソーシャルディスタンスなど、人との距離を取り、大声で笑い合うことも気が引けてしまう時代です。
『Touch=触れる』ことを主題としたこの舞台は、そんな社会を生きる私たちが”いま心から望む本来の姿を願う”様々な人の想いが込められて、生徒の皆さんに届けられていると先生方の姿から感じます。
物理的距離が離れれば離れるほど相手の全身が見えてきます。姿が見えなければ心から相手をイメージし、触れ合いを求める心が繋がりを産むと思います。
コロナ禍であっても学校が本来、人の集う場として『Touch〜孤独から愛へ』という舞台を届けたいと願い、実施に向かうために走り回ってくださっている先生方とともに風の劇団員も九州・関西を駆け巡っていきます。
舞台スタッフ 白石圭司