たんなるエスノグラファーの日記
エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために
 



年に50冊文学作品を読むという目標を掲げて4年目、なかなか本を読む余裕がないので「苦肉の策」として、いやいや、そうではなく、「教育上の新しい試み」として、4月から始まった1年生のセミナー・クラスで、メンバーの15人を4班に分けて、各班ごとにブック・オフに行かせて、105円のセール本のなかから読めそうなものを3冊ずつ買って来させ、週一冊ずつ読んだ上で、班ごとに集まってディスカッションさせ、そのうちもっとも面白かった本について、最終的にプレゼンテーションさせるという授業内容にしたのだが、今週の金曜がその第3週目にあたっており、3冊×4班=12冊のところ、重なりのある1冊を引いて、担当教員として、11冊を昨日までに読み終えたのであるが、それらは私がブックオフに行ったらチョイスしない本が多く、その意味で、選ばれた本は、なかなか新鮮なラインナップだったのであるが(写真:学生たちが選んだ11冊)、それらは、まずは、エピソード単位では知っていたが、初めて読んで、ストーリーの展開がなかなか奇抜だと感じた、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』、月が語る物語として、表現にひじょうに味わいがある、アンデルセン『絵のない絵本』、7つの星をめぐった王子様による物語である、サン=テグ・ジュペリ『星の王子様』という3冊の外国文学に加えて、こうしたタイプの小説が増えたためか、あるいは、登場人物にストレートに共感できないためか、いま読むとそれほど魅力的だとは感じられない、吉本ばなな『キッチン』、恋人が逝ってしまった交通事故をめぐる主人公の記憶を取り戻そうとするプロセスと、事故時の真実が明かされる、河原れん『瞬』、ゲームのなかの世界なのか現実なのか分からないという仕立てで、二つの世界を交差させた、山田悠介『Aコース』、小学生との奇妙なネット上の共同バイトのさまを描いた、なんと、17歳のときに描いた小説だという、才能あふれまくりの、綿矢りさ『インストール』、息子・岳に対する情愛をつづった小説またはエッセイ、椎名誠『岳物語』西のほうで、自然との調和しながら暮していた、「魔女」のようなイギリス人の祖母との日々をつづった、梨木香歩『西の魔女が死んだ』、未亡人である遠い親戚のおばあさんとの奇妙な共同生活と、主人公の悩める現実を描いた、青山七恵『ひとり日和』、80分で記憶がなくなってしまう、数学博士の老人の世話をする家政婦の日常のなかから、数学の味わい深さを感じさせ、なんと比喩表現がうまい作家なのかと感じさせる、小川洋子『博士の愛した図式』の計11冊であったが、さて、学生たちが、それぞれの班で、どれを、どういう理由で、1位に挙げるのか、いまからけっこう楽しみであるが、私の読書の話に戻れば、これらとは別に、次々に人民を逮捕して、収容所へとぶち込むというソ連邦のスターリン以降の時代の混乱を描いていて、個々のエピソードが無類に面白いのだが、6冊本を全部読もうと思ったが、1巻目で挫折してしまった、ソルジェニーツィン『収容所群島1』、「一寸法師」などの、ちょっとエッチな話などが含まれている、倉橋由美子『大人のための残酷物語』、さらには、小説家の主人公と玉乃井の娼婦との出会いから別れまでを、昭和の初めの東京の風景と季節の変化とともに描いた、永井荷風『濹東綺譚』も読んだので、今年に入って、これでようやく今年28冊となったが、まだまだ目標には届かない。

 



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