ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

汽水域

2014年12月05日 | 演劇

汽水域とは海水と淡水の混ざり合うところ・・・らしい。

てがみ座という劇団を主宰する長田育恵さんが脚本を書いた作品は、
これまで、江戸川乱歩・金子みすゞ・宮澤賢治といった
実在の人物を描いていることが多かったけれど、今回描かれているのは無名の一般の人々。

ご本人曰く「特定の人物から場そのものへのシフト」とのこと。

舞台は日本とフィリピン。

ステージの上には桟橋のようなものが左右から伸びている。

以前に観た金子みすゞさんをモチーフにした「空のハモニカ」と言う舞台のセットと少し似ている。
この時は、この桟橋のようなものが、道になり、部屋になり、広場になり・・・。

今回はフィリピンの村や川岸になり、あるいは横浜の寿地区となり・・・。

開演30分前に開場になり、シアタートラムの客席にはいると、すでに舞台上には
ホームレスとおぼしき人たちがうろうろしていて、少しずつ世界に引き込まれ始める。

そのまま、炊き出しがはじまり、物語が動き出す。

父親が日本人、母親がフィリピン人という男性が、大きな夢を持って日本にきたけれど
夢が破れて炊き出しの世話になっている。

少しずつ物語は過去に向い、彼のルーツであるフィリピンの川岸の村へと景色が変わる。

フィリピンで生まれ育ちながらも、両親が日本人ってことで、なかなか自分の居場所を見つけられない父親。
日本人の血が流れていることで、日本への夢を馳せる息子。

どちらも圧倒的な孤独を抱え、それぞれの立場で一生懸命に生きようとするけれど、
結局、何者にもなれないもどかしさ、辛さがひしひしと伝わってくる。

最後に少しばかりの希望の灯が見えて終わるのがせめてもの救いだろうか。

「よそ者」みたいな感じっていうのは、人種がちがうことに限らない。

日本の中でも東京と地方のちがいとか、出身校のちがいとか、実家と婚家のちがいとか、
さまざまなシチュエーションで、自分の居場所を見つけなければならない。

割り切りとか折り合いとか、自分の中で解決するしかないのだけれど。

だからこそ、人とのつながりを大切にしていかないと・・・と年を重ねるにつれ、より思いが強くなる。

それにしても、いつもながら、長田さんの繰り出す言葉は本当に美しいと思う。

人の心の奥を表す感覚的な言葉が何とも言えず、緻密できらきらしている。

その台詞を言う人の心の中が映像のように浮かんでくるというか・・・。

こういうのを才能っていうんだろうなあ。


今回、お付き合いいただいたのは、私が最初に勤めた会社の同僚の女性。

終演後、開口一番に「おもしろかった~」と


私が先に転職し、その後彼女も転職。
子育てが落ち着くまでの間は数年に年賀状のやり取りと数年に一度会うくらいだったが、
昨年あたりから会う機会が劇的に増えた。

全体的にどんぶり勘定っぽいところが共通していて、一緒にいてとても楽ちんな友人の一人だ。

孤独な人々がたくさん出てくる舞台を観た後には、
自分のまわりにステキな人たちがたくさんいてくれることへの感謝の気持ちがより強くなる。

「この世界にいくらひどいことが起ころうとも、私たちはつながりあってここにいる」という
長田さんのメッセージが心に響く今日この頃・・・。

ステキな景色を見せていただきました



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