「ショウ・マスト・ゴー・オン」
作・演出 三谷幸喜
世田谷パブリックシアター
2022/12/10
コロナ禍、ずっと会っていなかった大学時代の友人と、最近また観劇が復活。
11月末に一緒に行ったばかりで、すぐにまたお付き合いいただく。
いや~!笑った笑った!
舞台開演前の開場から、終演迄の舞台裏でのスタッフのドタバタを描いたもの。
開場寸前の舞台裏はすでに大変なドタバタ状態。
開演直前だというのに、主演俳優(尾上松也さん)は不調(飲みすぎ)でグダグダ。
演出家は道に迷ってついて遅刻。
猫は紛れ込む。
スタッフの一人がバックレて、代わりにお父さんがきちゃう。
めんどうな見学者が来たり、パーカッションの代役が必要になったり、とハラハラドキドキ。
差し入れのお菓子を執拗に配ろうとするスタッフもいて・・・
それを舞台監督(鈴木京香さん)が次々と捌いていく。
その指示を2人のスタッフ(ウエンツ瑛士さん、秋元才加さん)が一生懸命にこなす。
そこにもいろいろトラブルや失敗があり、とにかくバタバタ忙しく可笑しい。
出たり入ったりの間が絶妙だし、張り巡らされた細かい伏線が次々に回収されていくのは快感すら覚える。
尾上松也さんの怪演ぶりたるやすさまじい迫力と面白さ。
様々な衣装でいいところで登場するシルビア・グラブさんも面白過ぎる。
松也さんと京香さんの顔が並ぶと、京香さんのお顔が松也さんの半分!(失礼!)
謎の修復師(?)新納慎也さんの存在感もハンパない。
力のある人たちが本気でふざけるとこういうことになるのね。
計算されつくされたシナリオに、おそらくはアドリブも入り、とにかく気持ちよく笑わせていただいた。
この日びっくりしたのは、浅野和之さんが演じるはずの老医師を三谷さんが演じていたこと。
舞台に現れたとき「え?」っと友人と顔を見合わせる。
入口のあたりに書いてあったのかもしれないが、完全に見落としていた。
朝日新聞の木曜日夕刊に連載している三谷さんのエッセイで、
この公演中、体調不良でお休みしたシルビア・グラブさんや小林隆さんの代役を務めたことは知っていた。
まさか、この日も、とは。
特に不自然なこともなく、何も知らなければ、もともとそうだったと思ったことだろう。
これも楽しかったことの一つ。
いい記念になった。
と、大満足で観劇を終えた数日後、体調不良者が出た事での休演のお知らせを目にした。
チケットを買っていた方には申し訳ないが、観られてよかった、と思った。
だって、私も何度かほかの舞台の休演で払い戻しを余儀なくされたから・・・
もうすぐ千秋楽ってころ、配信のお知らせが届く。
なんと、コロナに感染してしまった主演の鈴木京香さんの代役を三谷さんがやるという。
観たくて観たくてたまらなくなり、配信チケットをポチ!
暮れの30日の忙しい時に観てしまった。
私が観た浅野和之さんの代役の時は、後半になっての登場で、セリフもそれほど多くない。
でも鈴木さんはほぼ舞台に出ずっぱり。
しかも女性!
シルビアさんの代役もされたと言うが、訳が違う。
というわけでワクワクドキドキしながらテレビ画面にかぶりつく。
三谷さんは女装するわけもなく、普通に男性舞台監督として登場。
周りの人たちは、内心はともかく、三谷さんがもとからその配役だったかのようだ。
終盤、元カレが登場し抱き合うシーンがあり、これはどうなるのか、
元カレは元カノになるのか・・・と思いながら観ていたら普通に男性同士で抱き合っていた。
そんなことがあっても不自然じゃないと思える世の中になった、と三谷さんが後にエッセイで書いていた。
ほぼオリジナル(浅野さんがいなかった)を見ていたので、比べながら観られたのも面白かったし、浅野さんの老医師も観られたし。
とても得した気分。
千秋楽を終えた後のエッセイには「呪われてると言われたけれど、実はラッキーだった」と書かれていた。
なぜなら、体調不良で休まなければならなかったのが毎回一人だけだったので三谷さんが代役となれたことや、
鈴木さんが最後だったから、何となく現場にも楽観的な空気が流れ、それも三谷さんで行けるんじゃないか、と
なったんだとか。
最初が鈴木さんだったら間違いなく休演だっただろう、とも。
ピンチをチャンスに変えたこの舞台の皆さんの底力を見せつけられた気分。
タイトルの「ショウ・マスト・ゴー・オン 幕を下ろすな!」そのもの。
私も少しくらいのピンチでくよくよしてはいられない、などと
妙に前向きな気持ちにもなれた。
今年最後の観劇は、新しい年に向かって希望が湧いてくるような、エネルギッシュで楽しいものだった。
まさに笑う門には福来る、ですね。
皆様今年もよろしくお願いします。
なんとか
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