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2022年東大本試験 トルキスタン通史 答案の書き方(1)

2022年02月27日 | 論述問題
2022年東大本試験 トルキスタン通史


東大にはエジプト通史、イベリア通史、シチリア史といった過去問があります。これらに共通するのは、長い歴史スパンで地域を考えるときは、大きな時代の変化に注目するべきだという点です。とくにエジプト4000年の歴史を510字で書かせた問題でそれが顕著でした。さて、今年の問題はトルキスタンについて8〜19世紀に渡って600字で論述せよというものでした。


まず問題の読み取り

① 解答すべきは、トルキスタンの歴史的展開(8〜19世紀)です。展開とは「次の段階に進めること。また、次の段階に進むこと。」ですから、「段階」そのものを考える必要があります。世界史的に言えば「段落」でしょう。この「段落」を発見することが解答のポイントです。

② 次にトルキスタンの何を書くのか?を探っていきます。

1、トルキスタンを乾燥地帯(西トルキスタン)とオアシス都市(東トルキスタン)に分けている点に着目します。意外とこんなことが考えるヒントになります。

2、トルキスタンでは文化が交錯する。文化についても書く必要がありそうです。「交錯」ですから、東から西からトルキスタンを通過したり、トルキスタンで定着したりしている世界史知識を思い出します。

⇛8世紀:タラス河畔の戦いでイスラム教が西トルキスタンに、東からは玄奘が仏典を求めてオアシス都市を往復した。

3,トルキスタンの支配について、周辺地域から侵入するケースと、トルキスタンで勃興した勢力が周辺に影響したケースがあり、それぞれ具体的な世界史知識を思い出します。このあたりが「段落」に関係するかな、と思いながら読み進めます。



解答のメモ

1,まず手始めにトルキスタンの勢力を時代順に書き出すことから始めるのが一般的でしょう。その作業をしながら「段落」を並行して考えます。

 

8世紀:西トルキスタンでソグド人 東トルキスタンで西突厥(〜744年)

9世紀:サーマーン朝(875〜999年) 東トルキスタンで西ウイグル国(ウイグルの西走840年)

10世紀:東トルキスタンでカラハン朝が成立。10世紀半にイスラム教を国境として最初のトルコ=イスラム国家となる。サーマーン朝をほろぼして西トルキスタンも支配しトルキスタンを統一。  

12世紀:契丹族のカラ=キタイ(西遼)がカラハン朝(1133〜1211年)を滅ぼす。

13世紀:チンギス=ハンによる征服。チャガタイ=ハン朝が東西トルキスタンを支配。

14世紀:チャガタイ=ハン国が東西トルキスタンで分裂。西チャガタイ=ハン国からティムールが登場。東チャガタイ=ハン国は存続。

15世紀:西トルキスタンでティムール帝国 東トルキスタンについては記述するのは難しいでしょう。

16世紀:西トルキスタンでウズベク人が建国。

17世紀:ブハラ=ハン国に成長した。

18世紀:東トルキスタンを清乾隆帝が征服。新疆とし藩部として理藩院が統括した。

19世紀:西トルキスタンをロシアが征服。



実際、試験会場でここまで書き出すことはできないでしょう。しかし、東大はもっと大きな「段落」を求めているだけですから、現場で細かい世界史記憶にすがる姿勢から抜け出せたかどうかが得点の分かれ目だったでしょう。



2,さて、「段落」です。「段落」ごとの勢力が侵入した勢力なのか、トルキスタンで建国した勢力なのかを明示しながら書く必要があります。またこの「段落」は、問題の読み取りに示したように、民族や国家の特徴を宗教や文化と関連させて考える必要があります。



「段落1」8世紀:タラス河畔の戦いでイスラム化が始まる。トルキスタンを経由してネ  ストリウス派や仏教が中国に伝わった。

「段落2」10世紀:中央アジアのトルキスタン化とイスラム化。

「段落3」13世紀:モンゴル帝国が支配。ジャムチが整備され東西交渉が発達。カトリックが中国に伝播した。

「段落4」16世紀:ウズベク人の支配。18世紀には東トルキスタンを清が藩部をおいて間接統治してウイグル人の文化や宗教は尊重された。

「段落5」19世紀:南下政策をとるロシア帝国により征服され植民地となる。



3,字数配分を考えます。「段落」は5つですが、「段落1」と「段落5」は半分程度しか書けそうもないので、600字を4つの150字ずつに分ける事になりそうです。そう考えると、細かい世界史的知識を書き並べることはできません。




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