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ジョン=ロックの「所有権」

2023年05月30日 | 高3用 授業内容をもう一度
ジョン=ロックは17世紀後半に活躍した哲学者です。世界史では「抵抗権」を提唱してアメリカ独立革命に大きく影響した人物として扱います。
その一方で、ロックは啓蒙思想の政治哲学者として18世紀に先駆けて「所有権」を擁護し、フランス革命が解く「所有権の不可侵」という理念にも大きく影響を与えました。

ロックは政府ができる以前の状態を想定し「自然状態」としました。彼は「私有財産」と「自己所有」を問題にしています。
ロックは人々が選んだ政府であっても政府が介入できない権利が存在すると考えていました。この権利を政府が承認する権利よりも前から存在する権利として「自然権」といいます。
その中に「財産権」も含まれるとしています。すなわち「財産を所有する権利」は政治が行われる前から「自然権」として認められているものだとしてい

この権利は人々が人間として本来持っている権利で、政府などによって保証されて初めて成立している権利ではありません。
政府が認めて初めて成立する権利と自然権を区別していくために、ロックはそもそも政府ができる前の状態を想定してみたわけです。それがロックの「自然状態」です。

ロックによれば「自然状態」では人々は自由で平等な状態にあるといいます。
しかしそのような「自然状態」でも人々は何をしても許される訳ではないと主張しています。この点がホッブスが想定した「自然状態」との違いです。
ロックは「自然状態」であっても人々には守るべきルールが存在すると考えました。そのルールが「自然法」です。この「自然法」は議会や統治者が制定する法律とは違います。

「自然法」が制約するものは、「自然権」を自ら放棄すること、または他者の「自然権」を奪うことです。すなわち「自然状態」におかれた人々は自由で平等であるが「自然法」を犯すことはできない。この「自然法」は「神」に根拠づけられています。個々の人間は「神」の創造物であるから、誰かのために「所有」されることを許したり、誰かを「所有」することはできないからです。このようにキリスト教的思考を持ち出す部分はロックの限界でしょう。
人々が「生命・財産・自由」を手放すことや奪うことができないのは、人々が「神」によって所有されているからとしています。

奪ったり与えたりできない「権利」は、他者に与えたり他者から得たりできる「権利」よりも強く自分自身が「所有」していることになります。人間は自分自身を所有しているのだから、自分が自分自身の意志による労働で生み出した「財産」も完全に自分自身が「所有」している訳です。
つまり、ロックは自分自身を「所有」しているということは自分自身の「労働」も所有し、その結果得られた「財産」も自分自身が所有していると主張しています。


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