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本日は第一回河合塾記述模試です

2016年05月23日 | ワークシート
9:00から14:15まで模試を実施します。
志望校を8大学書けますが、多くの諸君は3校くらいしか考えてないようです。
受験科目や配点などを調べてみたいものです。

一橋大学2016 第1問 解説 アテネと中世都市

2016年05月17日 | 論述問題
2016一橋大学 世界史第一問

問題文とリード文を注意深く読む必要があります。またトマスアキナスについては予備知識が必要です。


問われている点は
相違がなぜ生じたのか?
次に、歴史的実態のを対比する。

つまりは、都市の相違点を中心に指摘するのではない。違った性格の都市だと判断できるのはなぜか?ということです。

また歴史的実態という言葉も簡単なようで一癖あります。実態とはありのままの状態、実情のことです。すると、歴史的とあるので、都市成立に至るまでの状況を対比させて書くことになります。


すなわち、歴史的実態を対比させると二人が自分たちの都市を違った見方で見ていることがわかる、

両者の違いが明らかになるということでしょう。


ここまでみた後にリード文の下線部をチェックします。

注意すべきは中世都市については地理的と経済的とを分けていることです。

特に中世都市の成立において、地理的に注目すべきだと要求しているのです。この点は、リード文全体を読む上でポイントになってきます。


以上のことから、
解答の構成は古代・中世の都市社会の歴史的実態をそれぞれ200字ずつ記述します。ただし、この両者を対比させつつ、なぜそのような違いに至ったのか?を中心に意識しながら書き進める必要があります。なお、中世都市の場合は地理的実態を100字、経済的実態を100字に分けることができます。

ただし、情報量としては中世都市の成立の情報の方が受験生には多くの、古代の都市については書きづらいかもしれません。その場合は中世都市を250字、古代都市を150字として、バランスをとることも必要でしょう。


「対比」する場合の注意点

対比するには共通項をもって比較しなければなりません。たとえば都市の性格という面に注目すると、中世都市の性格は「商人の都市」と言えるでしょう。一方、古代の都市(アテネ)は「兵士の都市」ということができるかもしれません。

したがって、中世都市が「商人の都市」になって理由を記述することがメインの課題になり、同様に古代の都市はが「兵士の都市」になった理由を記述すれば、問いに答えることになるでしょう。

また、中世都市が様々な「市民」を内含していた一方で、古代都市の「市民」は一体感を持っていた点にも触れたい。ここは難易度が高かったところでしょう。


注意すべきは、中世都市と古代都市がどのような様子(実態)であったのかを説明するのではない、ということです。問題文には歴史的実態を比較せよ、とあるのですから、解答すべきは、どうしてそのようになったのか?です。



さて、中世都市の地理的方面における歴史的実態です。

リード文を見ると、トマスは精神生活の充実、霊物両生活の充足、とあるので教会が都市の中心的存在であったことを思い出させてくれます。トマス自身、ドミニコ会修道士であることは基礎知識でしょう。ドミニコ会などの托鉢修道会は都市貧民層への布教や異端の改宗などを行い多くの改宗者を獲得しました。こうして教会が都市の中心的存在となり、都市生活の精神的・物的な中心に置かれたわけです。都市が城壁を持っていたこと。またイタリアでは周辺農村部を支配し、ドイツでは農村部とは乖離していたことも記述したいところです。

この点を100字で記述します。


次に経済的方面における歴史的実態についてです。

リード文にもあるように中世都市は経済的自足性が重要視され、都市内の様々な階級や組合は都市の自給自足を可能にしていました。すなわち中世都市は「商人の都市」であると定義できます。

ではどのような歴史的経過を経ながら、都市が自立し自給自足を実現したのか?これは世界史の基礎知識のレベルです。商業ルネサンスにより都市と貨幣が復活。封建的束縛を強要する領主階級に対抗して傭兵を用いながらあるいは都市同盟を形成しながら、その束縛を排除していった。こうして自治権を獲得した。といった自治権闘争の経過を説明します。

また、中世都市には商人ギルド・同職ギルドがあり、市政に参加するのは親方まで、その他の市民は政治からは乖離していました。

以上の点を100字で記述します。



古代都市は「兵士の都市」であると言えます。論述の中心は、どのような過程で自由人が武装しつつ都市市民になったのか?そしてその市民団(アテネ)はどのようにして一体感を持つに至ったのか?という点です。


前8世紀のシュノイキスモス(集住)は基礎知識です。重装騎兵である貴族を頼って自由人が集住し、必要に応じてアクロポリス(城塞)に立て籠もって他のポリスと戦った。前6世紀になると民主化が進展し、サラミスの海戦を経て前5世紀ペリクレス時代に直接民主制が確立しました。こうして市民が兵士としてポリスの防衛を担い、政治に直接関与する政治組織が出来上がったわけです。全ての市民はが政治的に平等な立場にあり、ポリスの政治を担っていた。

以上を120字程度で記述します。


一方、経済活動は奴隷労働に頼っていました。アリストテレスも奴隷制度を容認していることは有名です。そのため市民は奴隷の反乱を抑えるために団結する必要がありました。市民団が少数だったスパルタが顕著な例ですが、アテネでも奴隷の反乱は頻発しています。これらも基礎知識の範疇でしょう。

以上を80字程度で記述します。




一橋大学2016 第1問 問題 アテネと中世都市

2016年05月16日 | 論述問題
第1問
 聖トマス(トマス=アクイナス)に関する次の文章を読んで、問いに答えなさい。

 聖トマスは都市の完全性を二因に帰する。すなわち第一に、そこに経済上の自給自足あり、第二には精神生活の充足、すなわちよき生活、がある。しかして、およそ物の完全性は自足性に存するのであって、他力の補助を要する程度、においてその物は不完全とされるのである。さて、霊物両生活の充足はいずれも都市完全性の本質的要件であるが、なかんずく第一の経済的自足性は聖トマスにおいて殊更重要視される。生活資料のすべてについての生活自足は完全社会たる都市において得られると説かるるのみならず、都市はすべての人間社会中最後にしてもっとも完全なるものと称せられる。けだし、都市には各種の階級や組合など存し、人間生活の自給自足にあてられるをもってである。このように都市の経済性を高調することは明らかに中世ヨーロッパ社会の実状にそくするものであって、アリストテレース(アリストテレス)と行論の類似にもかかわらず、実質的には著しき差異を示す点である。聖トマスにおいてcivitasは「都市国家」ではあるが、「都市」という地理的・経済的方面に要点が存するに反し、アリストテレースは「都市国家」を主として政治組織として考察し、経済生活の問題はこれを第二次的にしか取扱っていない。
 (上田辰之助『トマス・アクイナス研究』より引用。但し、一部改変)
 *civitas:市民権、国家、共同体、都市等の意味を含むラテン語。

問い 文章中の下線部における聖トマスとアリストテレスの「都市国家」論の相違がなぜ生じたのか、両者が念頭においていたと思われる都市社会の歴史的実態を対比させつつ考察しなさい。(400字以内)