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2001年東京大学第1問エジプト史概観

2021年12月25日 | 論述問題
2001年東京大学第1問 エジプト通史概観

輝かしい古代文明を建設したエジプトは、その後も、連綿として5000年の歴史を営んできた。その歴史は、豊かな国土を舞台とするものであるが、とりわけ近隣や遠方から到来して深い刻印を残した政治勢力と、これに対するエジプト側の主体的な対応との関わりを抜きにしては、語ることができない。
 こうした事情に注意を向け、
 1)エジプトに到来した側の関心や、進出にいたった背景
 2)進出をうけたエジプト側がとった政策や行動
の両方の側面を考えながら、エジプトが文明の発祥以来、いかなる歴史的展開をとげてきたかを概観せよ。解答は、解答欄の(イ)を使用して18行以内とし、下記の8つの語句を必ず1回は用いたうえで、その語句の部分に下線を付せ。
アクティウムの海戦  イスラム教  オスマン帝国  サラディン   ナイル川  ナセル  ナポレオン   ムハンマド・アリー


東大世界史において有名なエジプト5000年の歴史を510字で概観する問題です。この「概観」という言葉にポイントを向けられたかが結果に大きな違いを生じさせることになります。つまり、エジプト史はざっくり言ってどのような歴史だったのかを記述します。この点を整理すると、

古代エジプト史・ヘレニズム時代
ローマ帝国から東ローマ帝国の時代
イスラム教時代
英仏の侵略を受けた時代
その影響から脱した時代
の6つの時代に区分できるはずです。したがって、字数配分はそれぞれ100字ずつになります。

 そのうえで、リード文を読み返します。「到来して深い刻印を残した政治勢力と、これに対するエジプト側の主体的な対応」とあり、これをより明確にした指示が、それぞれに対応して「エジプトに到来した側の関心や、進出にいたった背景」と、「進出をうけたエジプト側がとった政策や行動」とされています。つまり、侵入した勢力の関心・背景と、エジプトの主体的な対応つまり「進出に対する政策・行動」を考えればよいとわかります。ここまでが問題の読み取りです。

 この問題に置いて、発想として大切なことは、侵入した勢力を書き出し、その時代のエジプトの王朝名などを書くのではない、という点です。この発想に立てば「ヒクソスと中王国」などを書くことになります。しかし、ヒクソスの侵入によって「エジプト史」は大きく変容したとは言い難い。ヒクソスを書いてアッシリアやアケメネス朝ペルシアを書かないという論拠はありません。そのような細かいことではなく、この問題が求めているのは「展開を概観」することです。大きく「エジプト史」全体の展開を考えることが求められています。