鬼のいる間に君の身も置かれていた
鬼は鬼と向き合っている
どうやら向こうからは見えないらしい
「ちょうどわしがお前さんくらいの頃」
年長の鬼の方が何かを語り始めようとしていた
若い鬼は目を合わせようともしなかった 少しも
君は構わず折句の扉を開いた
鬼のいる間は君のいる間
鬼は鬼で君には君のすべきことがあった
扉の向こうから逃げ場を求めるように
言葉たちが流れ込んでくる
先に届いたものに触れようと試みる
何か妙だった 言葉が指にかからないのだ
鬼の間が空気を汚し言葉の純粋性を損ねているのだ
「わしもそうだったんだよ。ちょうどお前さんくらいの頃」
年長の鬼は接点を求めて歩み寄ろうとしていた
若い鬼は目を合わさない
鬼のすみかに君が来てしまったのか
どちらからでもなくいつからか
君のすみかと鬼のすみかが交わっているのか
ただ季節的なことなのかもしれない
「お前さんも大変だろう」
折句の扉は開かれており
言葉はいくらでも入り込んでくるが
それはただ流れ過ぎるだけのものだった
ゆっくりと若い鬼の方に近づく
君は若い鬼の俯く先をのぞき見た
手の中にあるのは美しい湖だった