じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

捨象

2018-03-01 10:59:44 | Weblog
☆ マルクスの著書を読み始めたとき「捨象」という言葉に出会った。

☆ 広辞苑を引くと「抽象」に導かれる。「抽象」の項には「事物または表象の或る側面・性質を抽(ぬ)き離して把握する心的作用。その際おのずから他の側面・性質を排除する作用が伴うが、これを捨象という」とある。

☆ ある物事の固有の特性(原理・法則性)を把握・記述するために、能動的に具体的な属性を排除する作用ということか。

☆ 科学は法則性を好む。科学は法則性を探求する営みと言ってもよいかも知れない。人間の存在が不安定であり、偶発的な出来事に翻弄されるから、その不安が科学を生んだのかも知れない。

☆ 物理学は「神の数式」に迫っている。社会科学は、ぼんやりとした法則性をつかんでいるのだろうか。人間の心の領域はまだ未知の部分が多い。

☆ 私が学んだ教育学。教育学とは教育という社会現象の法則性を探究することであると教わった。人類の誕生とともに「教育」「学習」という営みは延々と続いているであろうし、今この時も無数の教育実践が積み重ねられているが、医学のように確たる処方箋を示すまでには至っていない。

☆ 試行錯誤、右往左往の連続だ。「教育」というものがそもそもそういうものなのか、それとも研究者の能力不足、努力不足ゆえか。

☆ 教育という営み、捨象していくと何が残るのだろうか。ラッキョウや玉ねぎのように、皮をむけば結局何もなくなってしまうのだろうか。そんなことをふと考えた。

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「Eternally」を聴きながら眠る

2018-03-01 04:35:52 | Weblog
☆ 宇多田ヒカルさんの「Eternally」を聴きながら眠る。心地よいバラード。「First Love」の流れ。

☆ 宇多田さんの声の震えに癒される。

☆ この曲、堀北真希さん主演のドラマ「イノセント・ラブ」(2008年)のテーマ曲だったね。

☆ 人の世は移り変わりが激しくて、無常。永遠なんてないけれど、せめて「この瞬間だけは」という切ない気持ちが伝わってくる。
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内田百閒「件(くだん)」

2018-03-01 03:45:43 | Weblog
☆ 内田百閒と聞くと黒澤明監督の「まあだだよ」(1993年)が思い浮かぶ。「先生(内田百閒)」とその教え子とのエピソードを綴った物語だった。

☆ 内田百閒の名前は知っていても作品を読んだことはなかった。「件(くだん)」を読んだ。「件」とは人面牛とでも言おうか、人の顔をした牛だという。この生き物、妙な宿命を背負わされている。寿命はわずか3日。その間に何か重大な予言をするという。

☆ ある夕方、「私」は件として生まれた自分を知った。広野にポツンと一人(一匹)。三日で死ぬのは構わないが、何を予言すればよいのか、途方に暮れている。

☆ そうこうしているうちに、「予言」を聞こうと人が集まってくる。最初はよくわからなかったが、どうやら親族、知人たちのようだ。あっという間にその数は増えた。

☆ 聴衆の一人が水を差し入れ、「私」がそれを飲むと、いよいよ予言かとみんな耳を澄ます。ところが私は何を予言すればよいのかわからない。そうこうしているうちに、予言しなければ生きながらえることができるのではと思えてきた。

☆ いっこうに予言しそうもない「私」に聴衆は焦り出し、怒りも感じてきたようだ。いよいよ3日目。遂に予言かと思われたその時、聴衆が四方八方に走り去ってしまう。そして「私」は死にそうにない自分を感じる。

☆ 何か夢を語っているような物語だった。飄々とした「件」の様子は内田の人柄の投影か。「件」として生まれたことを最初は恥じ、ただ予言をすることに焦燥していた「私」だったが、だんだん「件」であることに馴染んでいくところが面白かった。
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