「社長たる俺のいうとおりにせよ」、といったことを言う社長は、1に、「俺の言うとおりにやったら、間違いなく我が社は進歩発展する」ということと、「俺の言う事以外やったら、間違いなく我が社は退歩衰退する」と言っていることになる。2に、「偉いのは俺、分かっているのはおれ」だから「君たちの言うことなすこと、信用できん」というメッセージを部下たちに発していることになる。
ところが、実際はどうか。こうした企業は、あれよ、あれよという間にダメになってしまうのである。
当然だ。そうした社長の周りには何でもハイ、ハイのおべっかをいって信用を得ようという連中が占めるようになり、それがやがて全社に広がる。有能な社員、とりわけ諫言を発する社員は見せしめと、いの一番にさらし首にされる。首を切られ、晒されるのは誰しもいやだから、皆会社のことを思っての言動ではなく、首切り人のご機嫌を思って言動をするようになる。
こうして、よいしょ連中の仕事は、首を切られないためによいしょに励む、よいしょで信頼を得ようと努力する。またよいしょナンバー1を目指しての内部での権力争いで忙しくなる。それで企業本来の仕事をする者がいなくなる。
こうした現象を、組織から人心が離れるという。人心が離れるという意味は、国で言えば民、企業で言えば消費者が、背を向け、やがて離れることを意味する。
企業組織を動かしているのは従業員、そして企業を支えているのが消費者であるから、彼ら、彼女たちが背を向け、離れたら、企業は存立できず、間違いなく自滅する。
過去の歴史から、こうしておかしくなった国、衰退し消えていった企業はいくらでも挙げることが出来る。
組織はそもそも縛るものではなく、機能させるものである。この視点で、自社なり他者なりを見てみると、これから自滅しそうな企業もまた容易に予測出来る。