フランスでサンピエール
当時の安倍晋三首相が任天堂のゲームキャラクター、スーパーマリオになって登場したリオデジャネイロオリンピック(2016年リオデジャネイロオリンピック)から早くも5年、いままたオリンピックの話題が世をにぎわしています。
いろんな競技の中でだぼ鯊は「アーチェリー」の(マト)が気になって仕方ありませんでした。あの的を見る度に「マトウダイ」の体側の模様がちらついてならないのです。
フランスでサンピエール
イタリアでサンピエトロ
標準和名はマトウダイ、地域によってマトダイ、マトオダイとも発音します。呼び名はこのように地域によって若干違いますが、主に船釣りの対象魚です。
生息域はおおむね水深30~400メートル。図鑑から引き写しますと、北海道〜九州の太平洋・日本海・東シナ海、瀬戸内海。朝鮮半島東岸、釜山、済州島、オーストラリア沿岸、ニュージーランド、南アフリカ全沿岸、地中海、東大西洋とかなり広範囲に及びます。
身体の側面中心にある斑紋が弓矢の「的」のようだから和歌山県で「まとだい」など。
横顔が馬に似ているため。島根県などでは「馬頭」と書いて「ばとう」「まとう」、確かにウマヅラですね。
生息域が広範で世界にわたるため外国での呼び名も気になる所です。例えばフランスでは「Saint-pierre」(サンピエール) イタリアでは「Pesce san pietro」(サンピエトロ)。イタリアのサンピエトロと聞けば、行ったことはありませんが、だぼ鯊には「サン・ピエトロ大聖堂」という世界的な観光名所が思い浮かびます。ここはローマのバチカン市国にある大聖堂ですが「聖ペテロの墓所に建立」ということで、だぼ鯊は、昔々「釣りに関する記述はないものだろうか」と思って拾い読んだ聖書の中に「シモン・ペテロ、我、漁撈に行かん、といえば、我らもともに行かんと言い」とあるのを思い出しました。
そうです。シモン・ペトロはキリストの12人の使徒(聖人)の中で唯一「釣り師」で、ガラリア湖畔で魚をとる漁夫だったのです。イエスに最も愛された弟子として知られローマではピエトロと呼ばれたそうです。いずれにしましても気の遠くなるような昔の話ですがこの魚の学名が「ゼウス」(Zeus faber Linnaeus,1758)なので、この魚の横顔を見ていると、ギリシャ神話の最高神(天空を支配するとともに政治、法律、道徳など人間生活をも支配する)でローマ神話のジュピターに当たると聞けば、何とも神々しいというか威厳にあふれていませんか。一方、アメリカでは「John dory」…ジョン・ドリーとか。よく判りませんがワンコにジョンの名はつきものなので「馬」の愛称にも聞こえませんか。
さて、だぼ鯊はこの「戯言連載シリーズ」の最初のほうで、「ヒゲダイとヒゲソリダイ」についてご紹介しましたね。
密生するあご髭を蓄えた磯の人気魚ヒゲダイ(最近見ませんね)
の向こうを張って「髭をあたった跡も青々しい」ヒゲソリダイが存在することを…。
同じように、マトウダイとそっくりの魚で体側に「的(マト)」が見当たらない「カガミダイ」という魚が存在するのです。同じマトウダイ科ですが、カガミダイ属に分類されます。見た目は殆ど同じ。自然界の造物主は、時に退屈しのぎに、こんな悪戯をしでかしたとしかだぼ鯊には思えません。(八木禧昌記 イラストも。からくさ文庫主宰)
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