Episode4 遠征3
その頃自分では全く未開の地であった種子島で尾長グレが釣れるらしいという情報があった。しかしどのような仕掛けで挑むかは全く分からなかったが兎に角頑丈な仕掛けで行こうということで複数回釣行した。まず磯のグレ釣りから始めたが上げてもらった磯は水深がなく馬鹿にされたような感じがした。ところがその浅い磯はでかい尾長グレや何物かわからないが大物が生息する磯であった。同行の義弟は最初に軽く投入したウキにアタリがあったので軽く合わせ]た。が、これがとんでもない大物であった。たたらを踏んで斜面をつんのめっていく義弟を慌てて抱き寄せるような始末であった。
そんなことが続いてあまりこれといった釣果を上げられなかった。
種子島の磯を全く理解していなかったと言える。
翌日は船でクチジロ釣りに行った。ステンレスの籠にウニガラをいっぱい詰めて太いワイヤーハリスに物凄くでかい針に刺しエサは地元の大きなカニである。第一投からゴツゴツという当たりがある。ところがこれを掛けると釣れない。ステンレスの籠がヘシャゲていてなんだこりゃという状態である。クチジロの本アタリ迄待つことが必要で慣れるとわかるが本アタリは手元にドンとくる。
本アタリを掛けてやり取りするが、全て50cm以上ありその引きは強い。その日はその凄いアタリと引きの強さステンレスの籠をへこませてしまう強さに圧倒された。しかし、今も忘れられないのは最後に来た化け物である。義弟が当たりのように感じたのであろう軽く掛けたのである。すると根掛で何回竿をあおっても動かない。船頭は根掛だから船を移動して仕掛けを切るという。そしてアンカーを上げて船を動かそうとしたとき逆に船が勝手に動き出したのである。それは船頭も異常を感じた。3人がこれは魚だ!!と認識した。そうなると義弟は必死に竿を立てて釣り上げようとする。私は玉網をもって水面をのぞき込む。しかし姿は見えない。どのくらい時間がたったかわからないが玉網を持って水面を観ていた私は腰が抜けるほど驚いた。まるで畳のようなものが横になって見えてきたのである。ところがその巨体はそこで針から外れて海底へと帰って行ったのである。最初のあわせが弱かったのか歯の固い部分に掛り閂に掛っていなかったのか兎に角ゆっくりと海底へ帰って行った。義弟は悔し泣きに泣いていた。もしあれを釣り上げていたら間違いなく記録物であったと今でも確信している。優に80cm以上はあったと思う。忘れられない化け物のようなクチジロであった。