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佐藤功の釣ったろ釣られたろ日誌

釣り・釣りの思い出・釣り界のこと・ボヤキ.etc

日本の磯の開拓者ー7

2022-07-14 19:00:03 | 釣り界の歴史

宇治群島の釣りつづきー7

復讐戦

六分のいとがやっと届いた。待つ間の長かったこと。道具を付け替える間もモドかしく、エサつけもそこそこに今度こそきたれ、と投げ込む。

竿を連隊旗よろしく垂直に立て、それを両腕で抱き込むように抱えたまま座り込むと、途端にアタリがきて、いきなりグイッと竿を半円にシメ込んだ、

それからはもう何が何だか分からない、幾度も幾度も根本から腰を垂直に曲げた竿が,甲斐性もなく岩にへばりつくのを、必死に耐えて引き起こし、やっと強引にギリギリとまきあげると、流石は六分、ササラになりながらも水中の怪物を引き上げて来た。水面に浮かすとバカでかい口白、1貫八百はあろうという代物だった。

ハアハアと肩で息を切りながら、続いて前と同じ寸法で抛り込むと、また来た。こいつも凄い。後はもうサッパリ意識もなく、夢中になって、この重労働に従事した。

取り込んだのは全部で6枚だったが、その間、2寸のハリがアメのように伸びて外れたのが2回折れたのが1回、どうしても竿が立たずにワイヤが切れたのが3回で計6回、いくら釣ってもバラしても北鮮軍の人海作戦よろしく、後から後から新手、新手と喰いついて来る。

そしてこの悪戦苦闘にさすがの六分もハエズレの連続で、しまいには三分か二分の細さに瘦せ細る凄まじさ、これはもう釣りを楽しむ、という段階からほど遠い重労働であった。

午後2時頃急にアタリが遠のいた、底潮でも変わったのか、朝の8時からアタリづめに当たっていたのが噓のようにピタリと喰わなくなった。

私は岩の上にひっくり返って、長々と伸びた。疲労コンパイ、もうモノを言う気力もなかった。考えれば真夏のように照り付ける南海の直射日光の下、昼食も摂らずに、6時間余りも格闘していたのだ。ぐったりと精魂尽きるのも無理はない。あちらの岩の上で船頭氏が面白い釣り方をしているのが私の視野に入った。海に突き入れた竿にその時ちょうどアタリがあったらしく、彼は矢庭に竿をさっと後ろに引いた。竿を立てて合わせるのではない。そのままの格好で魚に引くだけ引かせておおむろに竿を持ったまま後へあとずさってハエを登、そこで竿をたぐり、ワイヤに手が届くと後はそれをつかんで引き上げた。簡単なことは簡単だが、これではワサつりの豪快さは味わえない、船頭氏が釣ったのは後にも先にもこの1枚だけだった。

しかし私の戦果も、6枚とったものの、10枚もばらしているのだから決して褒められたものではない、むしろ私の技術の未熟さを露呈した完敗というべきだろう。

 

続く

 

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日本の磯の開拓者ー6

2022-07-12 19:03:49 | 釣り界の歴史

宇治群島の釣りつづきー6

死闘・馬乗り碆

新しいしかけを結んで投げ込んだ。

すると、シズが底に着くかつかぬかに、やけにリールの回転が速くなり、いくらでも糸が出る、これは不思議と慌ててストップをかけてみると、なんとこれが「落ち込み喰い」でそのまま穂先が一気に舞い込んだ。ところがこやつも前回と同じで、どうにも竿が立たず、完全な力負けで道糸を引ちぎって逃げられた、それから後は連続4回、来る奴来る奴が皆、ナイロンを切って逃げてしまう、私はただ使役のように、餌をつけかえては抛り込み腕も折れんばかりの力比べを奉仕するだけのぜんぜん翻弄された形になった。

新品の百メートル銀鱗を巻き込んだリールの道糸も二つながら殆どなくなった、もう完全なノックアウトである。

私すっかりノボセ、頭に来てしまい、力んだのと恥ずかしいのとで真っ赤になりながら、クエ用の六分の道糸を巻いた61型リールを、船から持ってきてもらうように頼んだ「鶏をさくの牛刀を以て・・・」の例えながら、もうこうなれば、手段や方法を選んでおれない。さればと言って、今更場所を替えるのも、いささか業腹である。この場所はハエの真下がゴボッと入り込んでそこがヒサの巣にでもなっているのか掛けたやつがみな沖へ走らずに手前の穴へ突っ込むように逃げ込もうとする。

これでは糸が高切れするのも無理はないが、船頭氏や林氏の手前もある、何とかこの難所でたとえ1枚でも、モノにしないことにはOACの名誉に関わる、そう考えてその場所にへたりこみ、イライラしながら、新しく強力な援軍=リールと糸=がつくのを待った。

船頭氏と林氏は慰めの言葉もないような憐みの顔つきで、時々チラリと私の方を見る。ところが皮肉なもので、深みを釣る私に引かえ、浅場しかつれない船頭氏の竿にはてんでアタリすらもない。

続く

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日本の磯の開拓者‐5

2022-07-11 18:33:31 | 釣り界の歴史

宇治群島の釣りつづきー5

死闘・馬乗り碆

朝、今日の大漁を恵比寿さんにお祈りして、持参の焼酎を海にたらす。そこへ、今日は私も一緒にお供します、と言いながらやって来た船頭氏の道具をみて驚いた。田辺のクエ竿の倍も太い青竹に道糸全部がマグロ用のワイヤである「昼からアラ(クエ)をやるんですか?」「いえヒサ(石鯛)です、貴男の合成(ナイロン)では、ここのヒサは一寸無理でしょう」「なかなかこれで3貫までは大丈夫ですヨ」この自信満々の言葉が図らずもOAC(大阪磯釣クラブ)の名誉を傷つけるような私の未熟さを暴露する結果になろうとは、神ならぬ身の知る由もなかった。

潮の加減で、今日は昨日と反対側に竿を打つ、勿論馬乗り碆、昨日の復讐戦というわけだ。昨日の失敗に懲りているからハエずれを避け、できるだけ前方に竿を突き出した。足場を固め、さあ来いという体勢でアタリを待つ、林さんと船頭氏が盛んにフジツボをこませてくれる、潮は相変わらず速い、このポイントは遠投すると、前のハエにかかる恐れがあるので、足もとを釣ることになるが、それでも15ヒロは軽く出る。

8時過ぎ漸くコマセが利き始めたか、軽くアタリ出す、”来タナ”と身構える中に、置き竿にした東作の穂先がいきなり宙天から海中に突っ込んだ。その一瞬を捉え「タアーッ!」と気合もろとも、後ろにのけぞって合わせたが、これはどうしたことかてんで竿が立たない、こんな馬鹿なことがと、真っ赤に力んで両腕を竿にかけ、力一杯後ろへ反り返ったものの、竿尻を当てた下腹が猛烈に痛いばかりで、とてもリールを捲くゆとりはない。やっとジリジリ2,3尺ばかり竿を起こしかけた途端に、またもや凄い力でしめこまれてしまった。まるでクレーンで持ち上げるようにのけぞって座っている私の体をフワーッと浮かして前のめりにさせたのだから、なんとも驚くべき怪力だそして次の瞬間には私の竿は、ヤモリのようにピタリと岩に吸いつき、そこで2,3度上下にこすっていたとおもうと、急にフット腰を伸ばして、軽くなった。一瞬の拍子抜けで、私も危うく尻もちをつきそうになり、慌てて上体お起こして軽くなったリールを捲くと、2分のナイロン道糸が20メートル近くもハエズレでザラザラになり、そこで見事に高切れしている。

(場所が悪い)と初めて悟ったが、食いのたった今場所を変える手はないと、寸時も惜しく、ざらざらになった部分を切って捨て、新しい仕掛けを結んでなげこんだ。

 

 

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日本の磯の開拓者‐4

2022-07-06 19:37:03 | 釣り界の歴史

宇治群島続き

流れが速すぎて、コマセが利かないせいだろうか。

それで、昼からは少し沖の「馬乗り」という小さなハエに変わった、足場は少々悪いが、潮のぐわいで左側に打ち込んだ、1時間ほどして、次第にアタリが出始めたが、どうも食い込みが悪い、さればと、じやんじやんフジツボを掻き落とし、それから流れ子の餌をサザエに変えて投げ込むと、餌が底につかないうちに、グーと来た。どうせまた小さいやつだろうと軽い気持ちで竿を合わせたが、今度はどっこい竿が上がらない「アッ」と叫んだかどうか、途端に私の体は宙に浮いていた。不用意といえば不用意だが、足場の悪いトンガリ岩に両足を揃えて立っていたのだから、いこなり竿先を水中にまいこませるほどの激烈な衝撃には耐えきれるものではない。

一瞬私は体勢のバランスを失って、真っ逆さまに墜ちて行った、幸いにも水面近くで岩につかまり、柔道の受け身よろしく顔面を打つことは免れたものの、手はフジツボで切って血だらけ、それでも流石に竿は放さず,はね起きざま、その竿を立ててみたが、ナイロンはとっくにハエで高切れ、しばらくは声もなくそこにうずくまっていた。

林さんが驚いて飛んできて、私を引き上げて下さったが、「ここのヒサは口白と言って2貫以上はザラですから充分注意してくださいヨ」とのご忠告。

口白とは何か?どんな奴か?わたしは想像つかないが、ともかく宇治群島の凄さの一面にふれた思いで、背筋を冷たい戦慄が走った。するとフアイトが深いところから湧いてきて全身に溢れ。私は思わず「よォーシ」と口に出して呟いた。

今度は前の失敗に懲り。始めから慎重に充分体勢を整えて竿を持つ、コマセが利いて喰いも立って来たのか、直ぐゴツン、ゴツンという石鯛特有のアタリが穂先に来る。と、見る間に、竿全体が胴震いしながら穂先から水中に吸い込まれて行く。「エイッ」とばかり、後ろへひっくり返るほど強引に竿を合わせると途端に竿は満月を通り越して逆U字型にきしむ、想像を絶する凄い引きだ。そいつを力の限り腕限り、唯もう強引ガムシャラにまきあげると、何と口が真っ白な石鯛、腹に黒い模様があって薄灰色の魚体は、まるで石鯛の王様さながらの風格がある大きさは1貫六百クラスの標準を少し出た程度だが、その引きは大阪近辺のそれとは比較にもならぬ豪引である、どこにそんな力の差が生まれてくるのか,考えれば不思議千万

「来てごらんなさいヒサがたくさん見えますヨ」林さんの声に、下を覗いて思わず、ウワーッと唸った。南海の澄み切った波の下に、真っ黒になるほどの巨大な口白が銀鱗をひらめかして遊泳している。その数は20匹や30匹ではない、コマセにすっかりノボセ、浅場に上がってきたのだろう。

「俺は夢でも見ているのではないか」と思わず頬をつねってみたがやはり痛い、ふと、横を見ると、置き竿の穂先がまたもや舞い込んで、殆ど垂直に近い角度で、激しく上下にシャクッている、驚いて飛んで行ったが一瞬遅くハリはずれ。さればと、餌を付け替えるのもモドかしく、真っ黒な魚の集団に抛り込んだがどうしたものか、途端にもう当たらない、したを覗くと潮のながれが今までとは逆になって、あれほどもいたヒサが一瞬のうちにフイッと姿を消している。まるで嘘のようなはなしだが、潮が石鯛の就餌と動向に、絶対的な作用を持つという現実を、マザマザと見せつけられる思いがした。

時計を見ると4時、今日は4枚バラして3枚仕留めただけだが、よし、明日こそは釣って釣ってつりまくるぞ、口白よ、明日こそお前と勝負しよう、と心の中で呟いて竿を収めて船に帰った。

真紅の太陽が音もなく東シナ海の波間を染めて消えていく、身の引き締まる様な荘厳な眺め。やがて夜のとばりが徐々に暗く空を覆い、星が手の届く近さで降るようにまたたきはじめた。その頃からまたクエを試みたが、その夜も私の竿にはアタリは遂に来なかった、林さんが2貫たらずの小さいのを1本あげたのみ。

 

 

 

 

 

 

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日本の磯の開拓者‐3

2022-07-05 19:21:52 | 釣り界の歴史

宇治群島続き

ところで、何はともあれ先ず餌だ、1貫たらずのサザエでは、これからの長期戦に、何としてもあまりに心細い。

早速伝馬を下して磯に渡り、まずエサの採集に取り掛かった、自給自足という戦法だ。この島には穴子(ナガレコの1種)が多いといういう事だが、磯に上がって見ると,成る程あるワあるワ、忽ちのうちに3貫目ばかり採集した。

それを海水でザブザブ洗って、その一つを口に入れると実に美味い、これならヒサも飛びつくだろうと思って、時計を見ると午後3時半、石鯛にはちょッと時間が遅いので、楽しみは明日という事にし、船に戻って、今度は夜釣りの準備にかかった。夕食後、いよいよクエ釣り、いそに渡って竿を出したが、潮でも悪いのか、コトリともあたりのないままに夜が更けた、船頭が小さいフカと巨大なウツボを上げただけだった。

クチジロイシダイの大群

翌2日も晴天、午前5時に磯に渡る、さあーいよいよ夢にまでみた宇治群島への挑戦である。場所はどこもかしこも好ポイントだから、手当たり次第に試みてもしそこがダメならすぐハシケで移動することに決め、まず手始めに、ガランという瀬に上がる。下を見ると潮の流れが無闇に速い、同行の林さんがフジツボを落としてかぶせて下さったが、潮に流されて止まらない。

ええい、ままよと、碆の先端から第1投を打ち込む、撒き餌が利かないせいかアタリがない、陽が高くなり時間が流れる。と、8時、初めて待望のアタリが来た。グイと合わせて巻き上げたが、手ごたえも軽く、上がってきたのは7百匁未満の小さいやつ、続いてもう1枚これも先と同じぐらいの小さいもの折角ここまで来てと思うとどうも余り面白くない、それから続いて2回かけたが、一つは水面でバラシ、一つはワイヤ切れ、連続2回ものミスに、いよいよ以って面白くない、すると途端にアタリが遠のき、食わなくなった。ながれが速すぎてコマセが利かなくなったせいだろうか。

 

 

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