■新屋敷からタクシーで鹿児島市の北、西郷南洲顕彰館と南洲墓地に行く。
途中、タクシーの運転手さんが西郷終焉の地へ寄ってくれる。
■まず、西郷南洲顕彰館見物。西郷は、おいらにとって、全く不可解なので、何も書けない。
■西郷南洲顕彰館見物の間に雨が落ちたようだ。
■西郷南洲と郎党の墓群は凝灰岩でできていた。その御影石とはちがう、土色の石肌が雨に濡れた樹木の緑の中に群居していた。
◆それは、私がそれまで見たことのあるどんな墓地とも違っていた。西郷隆盛の墓が中央にあって、他のどの墓よりも大きく、堂々たる威厳を示しながらこの場所の空間を圧している。その左右には桐野利秋、篠原国幹の墓があり、さらに村田新八、別府晋介等等の薩軍の諸将の墓が居流れている。
振り返れば、場所は金江湾を一望の下に見下ろす景勝の地で、湾内には桜島が聳え立ち、晩秋の晴れた空にかすかな噴煙を棚引かせている。そして、その空は、湾口を越えてどこまでも広く、南の海原に連なっている。
墓ではなくて西郷隆盛その人が、現にその場にすっくと立っているような、薩軍の将士が一斉に甦って隊伍をつくり、西郷のまわりをひしひしと固めているような幻覚が、一瞬私を捉え、しばらくのあいだ私は、吾を忘れて茫然と立ちすくすほかなかった。
江藤淳『南洲随想』より。
■タクシーの運転手さんが桐野利秋の字が反対に彫ってあるんだよ、と教えてくれた。はたして、そうだった。逆賊がどうのこうので字が逆さに彫ってあるうんぬんと説明してくれたが、よくわからなかった。
■墓地からは桜島。
途中、タクシーの運転手さんが西郷終焉の地へ寄ってくれる。
■まず、西郷南洲顕彰館見物。西郷は、おいらにとって、全く不可解なので、何も書けない。
■西郷南洲顕彰館見物の間に雨が落ちたようだ。
■西郷南洲と郎党の墓群は凝灰岩でできていた。その御影石とはちがう、土色の石肌が雨に濡れた樹木の緑の中に群居していた。
◆それは、私がそれまで見たことのあるどんな墓地とも違っていた。西郷隆盛の墓が中央にあって、他のどの墓よりも大きく、堂々たる威厳を示しながらこの場所の空間を圧している。その左右には桐野利秋、篠原国幹の墓があり、さらに村田新八、別府晋介等等の薩軍の諸将の墓が居流れている。
振り返れば、場所は金江湾を一望の下に見下ろす景勝の地で、湾内には桜島が聳え立ち、晩秋の晴れた空にかすかな噴煙を棚引かせている。そして、その空は、湾口を越えてどこまでも広く、南の海原に連なっている。
墓ではなくて西郷隆盛その人が、現にその場にすっくと立っているような、薩軍の将士が一斉に甦って隊伍をつくり、西郷のまわりをひしひしと固めているような幻覚が、一瞬私を捉え、しばらくのあいだ私は、吾を忘れて茫然と立ちすくすほかなかった。
江藤淳『南洲随想』より。
■タクシーの運転手さんが桐野利秋の字が反対に彫ってあるんだよ、と教えてくれた。はたして、そうだった。逆賊がどうのこうので字が逆さに彫ってあるうんぬんと説明してくれたが、よくわからなかった。
■墓地からは桜島。