第85回全日本フィギュアスケート選手権(2016)、女子フリー(ジャッジスコア)。
第2グループからの放送は1人のみ。
<第2>
白岩優奈 SP:54.30(17) FS:131.07(3) 合計:185.37(6)
「ナイト・ワルツ~悲しみのクラウン~」♪ ターコイズブルー。昨季の曲をアレンジし直したプログラムで、今度はボーカルが入った。ルッツ・トウ3-3、後半フリップ・トウ3-3などジャンプを全部決めた。動きに柔らかさが増して、女の子からきれいなお嬢さんになりつつある。
終わってみればフリー3位、技術点はトップ
<第3>
大庭雅 SP:59.19(10) FS:106.26(13) 合計:165.45(13)
「ナルニア国物語」♪ 赤、肩布が揺れる。フリップ、ダブルアクセル+3回転トウループと安定したジャンプ。構えが長すぎず、スケーティングから自然にジャンプに入れるのがいい。雄大な音楽とうまくシンクロしているステップ。身体表現と技術がいい感じに融合したプログラム。
滝野莉子 SP:59.13(11) FS:(14) 合計:163.27(14)
地上波放送なし。
村上佳菜子 SP:58.52(12) FS:124.03(7) 合計:182.55(8)
「トスカ」より「星は光りぬ」♪ 黒、右胸に赤。冒頭の3回転フリップから、ジャンプがきゅっと高く上がる。オペラのヒロインになったように、大きな動きでスパイラルなどのコレオシークエンス。
基礎点の高いルッツとフリップは、フリップ1本のみ。トウループ2本サルコウ2本と、ジャンプ構成は難度を落として臨んだ。しかし、この完成度は素晴らしい 今できることはやりきって、氷の上に手をついた。
鈴木沙弥 SP:60.06(9) FS:120.35(10) 合計:180.41(9)
「ウェストサイド・ストーリー」♪ 赤。振付は鈴木明子。ダブルアクセル+3回転トウループ+2回転トウループなど、ジャンプの切れがよくて癖がない。「スピードがある中で跳べる」と解説・荒川静香さんも高評価。
前半は「トゥナイト」で柔らかに、後半はアップテンポできびきびした動きを見せた。得点を見てコーチもびっくり ベストを大きく更新!
浅田真央 SP:60.32(8) FS:114.10(12) 合計:174.42(12)
ファリャ「火祭りの踊り」♪ 赤。振付はローリー・ニコル。SPフィニッシュと同じポーズからスタート。トリプルアクセルに挑んで、着氷で弾かれたように転倒。続くフリップ・ループ3-3を下りる。
ふわりと手を動かしながら入っていくスパイラル、コレオシークエンスの身のこなしの美しさ。ぜひ若い選手たちは見習ってほしい。
後半ダブルアクセル+3回転トウループを下りたが、サルコウで転倒、フリップが1回転に。しかしステップはレベル4でGOE2.1、満点
ジャンプ以外の技術の素晴らしさを、もっと評価したいプログラム。
松田悠良 SP:61.63(7) FS:118.64(11) 合計:180.27(10)
「スパニッシュ・キャラバン」♪ 赤と黄色中心にカラフル。ダブルアクセル+3回転トウループ+3回転ループを着氷! トウループは回転不足判定だが、「次にループを跳ぶために少し回転を抑えないと難しい」と解説・荒川静香さん。少々減点されても、このジャンプは見ごたえがある。
ルッツのエッジに!(アテンション)がつき、後半のループに回転不足があったが、全体にジャンプの流れはきれいで、気になるミスではない。終盤までスピードもあって、今日の演技はよかった。
<第4>
本田真凜 SP:67.52(4) FS:128.59(5) 合計:196.11(4)
「ロミオとジュリエット」♪ ピンク、胸と背中に花。振付はジェフリー・バトル。きれいな3回転ルッツを下りたが、フリップが1回転に しかし落ち着いてダブルアクセル+3回転トウループ+2回転ループを決めると、後半に単独予定のサルコウに3回転トウループをつけるなど、しっかりリカバリーした。
柔らかな指先の動き、首や肩の使い方、視線などで、乙女の悲恋を表現。少し勢いが弱かったけれど、体調を完全に戻したらもっといい滑りになりそう キス&クライでは笑顔
三原舞依 SP:65.91(5) FS:132.26(2) 合計:198.17(3)
「シンデレラ」♪ ライトグリーン。振付は佐藤有香。冒頭のルッツ・トウ3-3から、とにかくジャンプが高くて加点がどんどんついてくる。滑走自体のスピード、その中で全てをコントロールできている。腕や脚を大きく伸ばすことで、小柄な体で演技全体を大きく見せる工夫。
爽やかで愛らしいシンデレラ
坂本花織 SP:63.36(6) FS:120.64(9) 合計:184.00(7)
「カラーパープル」「♪ 紫にストーン。フリップ・トウ3-3はややこらえたが、ルッツやフリップ・トウ・ループ3-2-2などしっかり。珍しく3回転ループで転倒したが、一歩をよく伸ばしながら丁寧に滑っていた。
宮原知子 SP:76.49(1) FS:138.38 合計:214.87
「惑星」ほか♪ 白。しっとりした序盤にすっと3回転ループを跳び、ルッツ・トウ3-3でちょっとステップアウト 美しい姿勢のキャメルスピンから、強い曲に変わるときりっとした表情で動き出す。全ての動きに意志があり、無駄な部分がない。ステップはレベル4にGOE2.1、満点
ダイナミックなスパイラルのコレオシークエンス、氷を支配する女王がいた。
樋口新葉 SP:68.74(3) FS: 合計:
リムスキー=コルサコフ「シェヘラザード」♪ アラブ風デザインの赤。膝をついた姿勢から、大きく動き出す。ルッツ・トウ3-3が高い!だけでなく、振付の所作がきれいで15歳と若いのに妖艶な雰囲気を出せている。3回転サルコウで転倒したのは惜しいが、後半にもルッツ・トウ3-3などをきっちり決めてきた。
要素と要素の間の動きでも、しっかり物語を表現できている。これでノーミスできたらゴージャスなプログラムになる。
目標の200点まで「あと1点もない~」と口惜しがるキス&クライだが、笑顔
本郷理華 SP:69.20(2) FS:125.08 合計:194.28
「Real Around The Sun」♪ 深緑。宮本賢二振付の昨季のプログラムに戻して臨む。冒頭のフリップは単独に、次のループが2回転になってしまった。しかし後半ダブルアクセル+3回転トウループ+2回転トウループ、最後にサルコウ・トウ3-3と頑張った。
特徴的なステップやコレオシークエンスで、会場が一体となる。昨季の勢いには少し足りない気がしたが、プログラムを戻してからの時間が短かったかも。
結果、宮原知子が3連覇 2位に樋口新葉、3位三原舞依が初の表彰台。4位本田真凜、5位本郷理華、6位白岩優奈、7位坂本花織、8位に村上佳菜子がSP12位から順位を上げた。浅田真央は12位。
結局、今季の実績がほぼ反映された結果と言えそうだ。
みんな、強くてカッコよかった。お疲れ様
羽生結弦がいない全日本フィギュアスケート選手権。それは数年後の予行演習だったかもしれない。
宇野昌磨は、いきなり優勝候補筆頭と目され、“追われる立場”になった。その中で勝ちきる。一段上によじのぼった。
グランプリファイナルのフリーで自己ベスト更新していたが、あと一つコンビネーションを跳べていれば、ネイサン・チェンをかわして2位になれていたのだそうで^^; その悔しさからコンビネーションジャンプを重点的に練習してきた。
後半最初のトリプルアクセル、4回転トウループが単独になったが、ルッツに2回転トウループ、さらにサルコウに3回転トウループをつける。「グランプリファイナルの後に練習してきたことが無駄ではなかった」と、練習の成果を本番で出せたことに喜ぶ。
試合で課題が見つかって、克服するために練習して、次の試合で成果を出す。そのサイクルで一歩ずつ、着実に強くなっていく。そうやって身に着けた強さは、本物だ。
無良崇人にとって、ショートプログラム1位は、大きなアドバンテージではなかった。ノーミスでシーズンベストではあるが、転倒があってコンビネーションができなかった宇野昌磨とわずか2.29点差。演技構成点では逆に1.15点差をつけられていた。
勝つにはフリーでノーミスが必要、と思っていただろう。実際、前半の4回転2本とトリプルアクセルは素晴らしく、これは初優勝が見えたか?と思った。
しかし、後半のトリプルアクセルがダブルになったあたりから、リズムが崩れたか。ループをトリプルアクセルに変えて着氷したが、細かいミスが続いてしまった。
ショートとフリーをそろえられないという課題が、今回も克服できなかった。「競技者として一番になれるかは本人の心持ち次第だと思います。『俺が一番になる』という意気込みをより強く持ってほしい」と語る父の無良コーチだが、気持ちはまだ足りなかったか。
後半崩れて残念な印象を残してしまったフリー。これがシーズン後半にどう影響するか。次のチャンスに、払拭できるか。
田中刑事は、「表彰台に上がれたらいい」くらいの気持ちがちょうどよかったんだろうか。
自己ベストのショートプログラムの勢いをうまくフリーにつなげた。パーフェクトではないものの、4回転サルコウ1本、トリプルアクセル1本、そのほかコンビネーションなど、ミスがあっても崩れずにまとめられたのは大きい。NHK杯を少し上回る得点は、前回がまぐれでないことを証明できた。
あとは、このレベルかそれ以上を毎回出していけるかどうか。4回転2本、トリプルアクセル2本を確実に決められるようにしたい。
世界選手権代表の選考は、少し難しくなってきた。
選考基準に照らして、「過去に世界選手権大会3位以内に入賞した実績のある選手が、けが等のやむを得ない理由で全日本選手権大会へ参加できなかった場合」に相当する羽生は、グランプリファイナル上位2名、ワールドスタンディング上位3名、シーズンベストスコア上位3名に該当するので、まず当確。
全日本優勝の宇野もこれで確定。では3人目は???
全日本2位の田中刑事は、ワールドスタンディング20位(4番目)、シーズンベストスコア248.44(4番目)。
全日本3位の無良崇人は、ワールドスタンディング13位(3番目)、シーズンベストスコア252.20(3番目)。
経験という点では、無良に一日の長があるが、、、さて、どうなるか。
来年はこの戦いに、羽生はもちろん、村上大介や山本草太が戻ってくるはず。大きく成長を見せている日野や友野も加われば、、、今から楽しみ
参考記事
初Vの宇野昌磨、涙に込められた思い 「追われる立場」経験し次なるステージへ
SP首位の無良、示した確かな存在感 課題克服に必要な「一番になる気持ち」