語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】聖五月人には青の時代あり ~5月22日~

2017年05月22日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。
 ☆印は共選作

<金子兜太選>
 ①餓死病死爆死地球の子供の日 (大阪市)三木節子
 ②四季に死期隠し眺めし春がゆく (筑紫野市)二宮正博
 ③天空の棚田千枚鯉幟 (加古川市)森木史子
 ⑦月光のさなかにひらく山法師 (川崎市)沼田廣美
 ⑧さくら咲く伯父はレイテの水中花 (館山市)蝦名正男
 ⑨☆春愁の影引く試歩となりにけり (八代市)山下接穂
 【評】三木氏。地球は「こどもの日」まで暗くなった。餓死や病死に加えて戦争で失う子供まで増えている。二宮氏。一年中死期を隠して眺めてきたのに、もう春はゆく。森木氏。空に向って広がる棚田千枚、農家も鯉幟も多数。五月だ。

<長谷川櫂選>
 ①縦書きの国に生まれて心太(ところてん) (多摩市)谷澤紀男
 ②銃持たず終る一生更衣 (佐賀県有田町)森川清志
 ④かくれんぼしてゐる貝や汐干狩 (越谷市)伊藤とし昭
 ⑥散るときも八重に重なり八重桜 (三鷹市)二瀬佐恵子
 【評】一席。立て板に水、のような縦書きの日本語。心太と止めたところがうまい。二席。つくづくと安堵(あんど)しているのだ。まだ終わってはいないけれど。(後略)

<大串章選>
 ①聖五月人には青の時代あり (川越市)渡邉隆
 ③いつの世も戯画になりたる蛙かな (泉大津市)多田羅紀子
 ⑤夜ざくらを見上げ戦士と呼ばれし日 (羽村市)寺尾善三
 ⑧☆春愁の影引く試歩となりにけり (八代市)山下接穂
 【評】第一句。ピカソ(1881?1973)に「青の時代」「バラ色の時代」があるように、人にはみな「青の時代」がある。(中略)第三句。中でも「鳥獣戯画」が有名。

<稲畑汀子選>
 ①谷底へまた谷空へ飛花落花 (浜田市)田中静龍
 ②百千鳥会話続かぬ二人かな (神戸市)涌羅由美
 ④たんぽゝの絮(わた)飛ばす風運ぶ風(芦屋市)酒井湧水
 ⑦過疎すすむ峡の村にも鯉のぼり (奈良市)田村英一
 【評】一句目。山桜の情景を見た。飛花、落花と見分け、渓谷の桜に一瞬心うばわれた作者。二句目。囀(さえず)りしきりの中で人は黙すのであろう。会話が続かぬと具体的な表現が妙。(後略)

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年5月22日)
朝日俳壇
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 【参考】
【朝日俳壇抄】戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 ~5月15日~
【朝日俳壇抄】空爆の次は花見のニュースかな ~5月7日~
【朝日俳壇抄】鞦韆は蹴るべし愛は返すべし ~5月1日~


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