語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】なぜ、自分に余裕がないのか ~『武器を磨け』~

2018年02月07日 | ●佐藤優
 <常に何かに追われているような気がする。どれだけ競争してもラットレースのように行き着く先が見えない。お金だっていつも足りていない。今の世の中は、そんなビジネスパーソンであふれている。
 一体なぜ、そんなふうにいつも余裕が持てないのか。実は競争そのものが悪いのではない。ライバルに負けたくないと切磋琢磨し、自分の目的を果たそうと努力することは大切である。
 ただ、競争に身を置きながら、もう一人の自分を持つというリスクヘッジができていないことが余裕のなさに表れているのだということに気付いているだろうか。
 もう一人の自分を持つのは「複線思考」とも言う。諜報のプロフェッショナルの世界でも「もう一つの顔」を持つ複線思考は重要な要素だ。イスラエル軍の諜報機関「モサド」でも、ロシアの対外情報庁(SVR)でも、そこで活動する諜報員には本職であるインテリジェンス以外の仕事のスキルを、必ずといっていいほど身に付けさせている。
 ジャーナリストや学者、研究者などの仕事をさせるのだが、それはいわゆる世を忍ぶ仮の姿ではなく「本物」の教育と訓練をさせるのである。ジャーナリストであれば、その分野で署名記事が書けるぐらいにしてしまう。
 それは相手国に対するカモフラージュになると同時に、何らかの事故でインテリジェンスの世界にいられなくなったときにもリスクヘッジになるからだ。
 筆者も少し意味合いは違うが、外務省時代、外交官の仕事をしながらモスクワ国立大学で客員講師もやっていた。そのおかげで普通の外交官では会うことができないロシアのインテリとも知り合うことができ、そこからの人脈でクレムリンへの出入りが自由にできるようになり、大統領府の上級職とも付き合いが生まれ、結果的に仕事に役立った。
 ビジネスパーソンの世界でも同じことがいえる。一つの世界だけで生きて来て、そこのことしか知らない、わからないというのでは仕事は広がらない。それに、もしもその世界で食べていくことが難しい状況に陥ったとしても、他にも自分の世界を持っていれば、それが小さなものであっても食いぶちにはなる。
 複線思考は自分の身を助けてくれるだけでなく、そうした“保険”があるというだけでも精神的に楽になるのである。>

 <組織で長く仕事をしていると仕事の上での失敗や、人事抗争などに巻き込まれて「干される」ということもあり得る。それまで、自分はその分野でそれなりにやってきた、評価もされてきたというプライドがある人間ほど干されたときのショックは大きい。そうしたときも複線思考は役に立つ。>

□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』 』(SB新書、2018)の「第5章 図太く生きる」の「もう一人の自分を持て」の「なぜ、自分に余裕がないのか」を引用、および「念入りに準備すべきタイミングとは」から一部を引用
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 【参考】
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