語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【教育】体罰依存の陰に潜む統計的錯覚 ~「平均への回帰」~

2013年09月02日 | 社会
 (1)昨年12月に大阪市立桜宮高校の男子生徒が自殺した問題を受けて体罰に関する緊急調査が行われた。
 8月9日、文部科学省は次のように発表した。
  (a)体罰を行ったことが確認された教員は、延べ6,721人(2012年度)
  (b)被害を受けた児童・生徒は、14,208人(同)。
 体罰が行われていた学校は、4,152校で、全体の10.8%に当たる。

 (2)なぜ体罰はなかなかなくならないのか。
 体罰が行われた場面として、最も多かったのは、
  授業中31.8%
  部活動30.5%
で、この2つで全体の6割を占める。
 子どもたちの学業成績や部活動の成果が振るわないため、ハッパをかける意味も込めてつい手をあげてしまう、というケースも少なくあるまい。
 実際にパフォーマンスに改善が見られると、体罰が有効である、という思い込みが強まり、ますます体罰から抜けられなくなる。
 実はここに、統計的な錯覚がひそんでいる。

 (3)たとえいつも同じように頑張っていても、偶然によって結果が左右される。そのとき、今回のデキが平均よりもたまたま悪かったとすると、次回はこれよりも改善する可能性が高い。
 つまり、体罰の有無とは一切関係なく、悪い結果の後にはそれよりもよい結果が出やすい。
 サイコロを振って1や2の小さい数字が出たときに、もう一度振ると、それよりも大きな数字が出やすい。これと全く同じ理屈だ。
 これは「平均への回帰」と呼ばれる統計的な現象だ。

 (4)「平均への回帰」は、教員が体罰の罠にはまってしまう原因の一つと考えられる。  
 「平均への回帰」は、子どもたちの勉強やスポーツに限らず、何かのプロジェクトに繰り返し取り組んでいる状況で、一般に生じる。
 「ほめると次に失敗し、しかると次に成功する」と信じている指導者や経営者は、単なる統計的錯覚に躍らされているだけかもしれない。

□安田洋祐「体罰依存の陰に潜む「平均への回帰」という統計的錯覚 ~数字は語る~」(「週刊ダイヤモンド」2013年8月31日号)

 【参考】
【社会】体罰を容認する橋下市長発言
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