語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】三好達治「湖水」

2015年07月15日 | 詩歌
 この湖水で人が死んだのだ
 それであんなにたくさん舟が出てゐるのだ

 葦と藻草の どこに死骸はかくれてしまつたのか
 それを見出した合図の笛はまだ鳴らない

 風が吹いて 水を切る艪の音櫂の音
 風が吹いて 草の根や蟹の匂ひがする

 ああ誰かがそれを知つてゐるのか
 この湖水で夜明けに人が死んだのだと

 誰かがほんとに知つてゐるのか
 もうこんなに夜が来てしまつたのに

□三好達治「湖水」(『測量船』、第一書房、1930)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】三好達治「雪」
【詩歌】三好達治「春の岬」
【詩歌】何をうしじま千とせ藤 ~牛島古藤歌~
【読書余滴】ミラボー橋の下をセーヌが流れ ~母音~


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【メディア】と広がる安倍政... | トップ | 【メディア】「文春」が「読... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

詩歌」カテゴリの最新記事