語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>結局国民が損する東電救済スキーム

2011年05月21日 | 震災・原発事故
 5月13日、民主党政権の関係閣僚会合決定という形で、東電救済「機構」の設立が決まった。
 東電を含む原発所有電力会社が、新設される「機構」に負担金を支出し、この資金をもとに機構が東電に出資・資金交付し、この資金から東電は被災者らに賠償金を支払う。電力会社の負担金で不足する場合、政府が「融資」する仕組みだ。
 電力会社の負担金は、経済産業省が電気料金算定時の原価に含めることにするため、各社のコスト削減努力で吸収できなければ、電気料金の引き上げとなる。つまり、消費者負担となる。

 問題点の第一。東電に融資する三井住友銀行の原案をもとに政策立案している【注】。
 同行を含む銀行団は、4兆円異常の債権を東電に有する。債権を保全したい銀行のアイデアが政府案のたたき台になったため、当然、銀行はビタ一文も損しない案だ。東電の大株主は、大手生保(第一生命、日本生命)およびメガバンク3行(三井住友など)だ。彼らの懐が痛む減資をするわけがない。東電で儲けてきた彼ら、債権者にして大株主は損をせずに済みそうだ。
 政策形成プロセスを追うと、名門省庁である経産省の政策立案能力の劣化が目立つ。一業者の試案を参考にするとは、誇り高き経産省のキャリア官僚にはあり得なかった。ふつうは、業者が持ちこんでもゴミ箱行きだ。メルトダウンは、福島第一原発だけでなく霞が関でも起きている。

 【注】「【震災】原発>経済産業省の『電力閥』」参照。

 問題点の第二。政策立案省庁と業者との距離感がない。
 有力な天下り先であり、東電と持ちつ持たれつで原子力政策を展開してきた経産省だから、東電に厳しくできない。テレビでおなじみの西山英彦審議官は、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長だった09年に娘が東電に入社した。監督官庁と業者との癒着が疑われても仕方ない。

 問題点の第三。賠償金は、電力各社の負担金が基本原資だ。財政支援は腰が引けている。
 財務省は、交付国債という「引き出し枠」を示すだけだ。国庫からキャッシュが機構に積まれるわけではない。電力会社の負担金だけでは足りずに交付国債の一部を換金して賠償に充てても、電力会社が長期の負担金の形で国庫に返済しなければならない。国のカネ(税金)は、あえるのではなくて、返済が義務づけられた融資なのだ。だから、財務省の懐は痛まない。

 かくして新設される機構は、政策立案過程に関与できたメガバンクや経産・財務両省の利害が優先された「東電関係者救済機構」だ。
 結局、政策立案に関与できない国民に、電気料金という形でツケ回しするのだ。

 以上、記事「東電救済スキームのデタラメ 結局は国民が損をする」(「AERA」2011年5月23日号)に拠る。
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