語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】岩田宏「むすめに」

2015年07月25日 | 詩歌
 ことばは手に変れ
 とても男らしい手に
 すこし汗ばみ すこし荒れた
 実用的な手に なぜなら
 ぼくはことばを
 突き出さなければならない
 自殺を決心したむすめ
 あなたに なぜなら
 それがぼくの権利
 あなたの義務は
 思いつめ 思いつめること
 まるで追いつ追われつ
 走るように なぜなら
 夜は戦争よりも長いんだ
 政府もあなたも徹底的に一人で
 朝ほど痛い時間はほかに絶対ないんだ
 そのことを百回あるいは
 千回思って絶望しなさい
 あなたは睡眠薬を二百錠飲むつもりだが
 薬より口あたりのわるいことばを
 あなたの穴という穴に詰めこむのが
 ぼくのほんとうの望みなんだ
 サディストどもが
 拍手している ぼくは
 あなたにあげる

□岩田宏「むすめに」(『いやな唄』(ユリイカ、1959)所収)
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 【参考】
【詩歌】岩田宏「感情的な唄」
【詩歌】岩田宏「頭脳の戦争」 ~頭のなかの甲乙丙~
【詩歌】岩田宏「部屋」 ~おふくろ~
【詩歌】岩田宏「ささやかな訪問」
【読書余滴】すべてをルフランに変える青春の無知


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