語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】岩田宏「頭脳の戦争」 ~頭のなかの甲乙丙~

2015年07月23日 | 詩歌
 「まあなんとかなるだろう」と言う人を
 甲とし
 「もうどうにもならんよ」と言う人を
 乙とする
 甲と乙は戦闘行為に入るものとする
 ちいさな大脳の表面で
 白色のはららごに似た大脳の表面で
 その顕微鏡的な山や谷や泉を舞台に
 甲乙双方は戦闘の終結まで戦うものとする
 甲が勝った場合
 乙は現状のままの地球を甲に譲渡すること
 乙が勝った場合
 甲は任意の核兵器のボタンに即時指を触れること

 立会人は甲乙双方の本質的同一性を証明せよ

 甲または乙のいずれかが
 この戦争の意義について疑念を抱いた際には
 甲乙合議の上戦闘を停止することができる
 その場合
 「甲も乙もトボけないでくれよ」と言う人を
 丙とし
 丙は大脳表面の戦争において
 何らの予告も憐憫もなく
 甲乙双方を虐殺し
 すべての兵器を没収するものとする
 但し対未来防御兵器「無関心」及び「恐怖」は
 未来の有無に拘わらず絶対に保管せざること
 一切の処理を完了した丙は
 甲乙の死体をはあとの内部に埋葬するため
 成る可く速やかに大脳のぬかるみから立ち去ること

 立会人は丙の決断とやさしさを賛美せよ!

□岩田宏「頭脳の戦争」(『頭脳の戦争』(思潮社、1962)所収)
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 【参考】
【詩歌】岩田宏「部屋」 ~おふくろ~
【詩歌】岩田宏「ささやかな訪問」
【読書余滴】すべてをルフランに変える青春の無知


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