よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

中谷巌 『私はなぜ自壊したのか』

2009年02月02日 | No Book, No Life
中谷巌(経済学者)の転向


『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社、2008)で中谷巌氏は、新自由主義者だった自分を謙虚に反省しているかのような言説を展開している。この人は本当にどうかしている。ちなみに友人が中谷巌氏が学長を務めていた多摩大学に准教授として勤務しているのだが、この人の大学経営能力も「自壊」して、定員割れ(Fランキング入り)と新設高校の失敗を責を問われ、過日その職をクビになったばかりである。この人は「自壊」させることが好きなようだ。

本来ならば、『私はなぜ自壊したのか』と題名を改めるべきだ、もしあなたが謙虚な研究者ならば。

まず『資本主義はなぜ自壊したのか』という題名に中谷巌氏の不遜ぶりが表現されていることに読者は気づくべきだ。かってに資本主義を自壊させちゃいけませんよ。彼の自己弁護のロジックは謙虚さを装いつつも実は狡猾である。「資本主義が自壊した」という実証的な根拠を挙げず、いきなり、「自壊した」という過去形の動詞を使って総括している。

彼の内在的論理はこうだ。かつては、日本のためによかれと思って「資本主義」を擁護してきた。とくに小渕内閣にたいして、アメリカ型の競争社会実現のための方策を積極的に提言した。しかし米国で「資本主義」が崩壊した。日本もそのあおりを喰って多くの人々が困っている。だから自分の非をいち早く認める。だから読者も、「資本主義は崩壊した」と認めてください。ついでに読者はそのような自分の謙虚さも追認してくださいと。

事実はこうだ。世界同時不況(恐慌突入一歩手前)で、新自由主義や市場原理主義の旗色が色あせるや否や、中谷氏は関が原の小早川秀秋よろしくパッと旗色を変えた。そして、「叛・資本主義」を引っ張り出して旗に貼り付けた。ただそれだけだ。それはそれで世をシノいでゆく氏一流の身の振り方なのだろうが、あまりにも浮薄のきわみだ。

彼の言う「資本主義」は、実は「私」の言い換えに過ぎない。もう一度言う。『私はなぜ自壊したのか』と題名を改めるべきだ。

しかし確信犯的非愛国者=竹中平蔵に比べれば、まだ救われているのかもしれない。先日、東工大で久しぶりに副島隆彦氏と会って親しく意見を交換する機会があり、竹中平蔵についてこっぴどく批判していたのは、まったくの同感。毒を食らわば皿まで。厚顔無恥。副島隆彦氏は佐藤優氏との対談で、「竹中さんは捕まるのではないかと思っています。リーマンブラザーズが竹中さんの資金源でしたからね」とはっきり書いている(「暴走する国家、恐慌化する世界」p76)。

小泉親分も目がないと2008年引退を表明。アメリカ型競争社会の実現をいっしょになって唱道していた中谷巌氏もあっさり「懺悔」して降参。小早川巌は、背後から竹中平蔵を襲うのか?さあ、どうする竹中平蔵?そっと住民票を海外に移して逃亡の準備でしょうか。

資本主義、新自由主義、市場原理主義を十把一絡げに、自壊、崩壊、終焉といったセンセーショナルな言葉で否定する論調には辟易。経済学者という肩書きでシノいでいる連中さえもこんな簡単なことを混同している。宇野弘蔵の恐慌論を引くまでもなく、循環過程を経て近代資本主義は展開され、変質してゆく。

資本主義は終わらないが、市場原理主義やそれを操作してきた新自由主義には大きな変更・修正が加えられ、新自由主義的な政策を放棄する国々のオンパレードとなる。日本もそうなる。

新自由主義思想のもとでは、市場原理主義が重視され活用される。そして医療、福祉、交通などの公共社会サービスを縮小させてゆき、公営企業を民営化し、経済の対外開放を促進し、規制緩和にも執着質的に取り組む。また市場競争を促進し、労働者保護などを手薄にしてゆく一連の政策の体系・経済思想である。アメリカのロナルド・レーガン、イギリスのマーガレット・サッチャー、日本の小泉純一郎政権そして、それ以降も新自由主義は経済の一大潮流として大きな影響を及ぼしてきている 。

新自由主義的政策が昂進してきた国々では、必然的に社会のありようが市場経済のなかに取り込まれた。医療サービス、介護サービス、医療保険、簡易保険、公共交通、教育、保育、育児支援などはそれらの例だろう。市場から排除される人々が増加するという現象も起こっている。貧困者の救済、社会的弱者への支援、派遣労働者の雇用確保などは、市場で活動する営利企業から見れば、期待収益に乏しいゆえに事業化の対象にされない。小さな政府、あるいは小さくさせられた政府も、積極的にこのような人々に支援を送ることを躊躇する。

中谷巌や竹中平蔵の輩のおかげで米国留学組みへの風当たりは強くなるだろう。たしかに、自分のまわりにも「米国留学=米国かぶれ=親米・反日分子」があてはまるような人間ははいて捨てるほどいるが。米国流留学を経ながらも、リベラルコンサーバティブなスタンスから愛国を自認する立場からは、このサイトが面白い。

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