よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

国民医療費高騰に苦しむアメリカ

2005年03月24日 | 健康医療サービスイノベーション
2005年度の米国国民医療費の推計値が米国の当局から発表された。円換算では約200兆円となり、米国GDPの15.6%相当だ。この数値がいかに突出したものかは、他の先進諸国と比較してみれば一目瞭然。

2位のスイスが11.2%で、アメリカは4.4パーセントポイントも高く突出している。ひるがえって日本は世界では18位で7.8%である。

このような医療統計を米国が発表するときまって出てくる日本の国民医療費擁護論がある。いわく、「平均余命、乳幼児死亡率など主要なインディケータをとっても日本の健康アウトカムは世界のトップレベルにある。しかも国民医療費は対GDP比率でアメリカの半分しかない。ゆえに日本の医療政策はうまく機能している」

アメリカを基準にしてものを考えるからこのような楽観論が生まれてくる。医療政策ではアメリカはまったくの問題児であり、アメリカの医療を基軸にして判断すると大きな過ちをおかしてしまう。アメリカの医療の特異性、異常性をじっくり考えてみる必要がある。

まずアメリカには国民すべてが加入できる国民皆保険制度がない。また薬価などの公定価格制度もないので政府当局が医療サービスのサプライ・サイドに規制をかけにくい。またディマンド・サイドでは、金持ちは世界の最先端の高度医療を享受できるものの、なんらの医療保険にも入っていない米国(居住者を含む)は3000万人以上いる。

米国では株式会社が病院を経営している。患者、病院、保険者の中に介在する営利のHMO(ヘルスメンテナンス・オーガニゼーション)などが多数存在している。新薬や新規医療技術の開発、市場への導入はスピーディーだ。一言でいえば、市場経済の競争原理が影響を及ぼす範囲が他の国々にくらべ断然広い。よって、日本の医療制度を議論するときに、アメリカと安直に比較するのはムリがあると言わざるをえない。