hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

重松清「かあちゃん」を読む

2009年08月13日 | 読書2

重松清著「かあちゃん」2009年5月、講談社発行を読んだ。

中学生のイジメがテーマ。誰からも助けてもらえなかったクロちゃんは、自殺を図り、学校を去った。いじめる者より、むしろ傍観していた者が心に傷を負う。そして、彼らは、夫の交通事故の罪を一人で黙って背負い20年も笑わなかった年老いた「かあちゃん」に出会って、・・・。



イジメに、祖母、母、娘と母の献身的愛のリレーが絡む。母親が認知症の実の祖母にありえないほどやさしく接するのを不思議に思う娘に、母が言う「みんな繰り返してるのよ。お母さんを見て育って、自分がお母さんになって」と。

章毎に主人公が変わり、つっけんどんで冷たく見える教師が、次の章で主人公になると、実は負けまいと必死に頑張っている人だったり、外から見ると何でも完璧で理想の教師が、実はストレスに悩んでいたと、多面的に読める構成になっている。

贖罪と言うが、償うことなど不可能で、忘れないことしかできない。せつないが、温かいものが次々とリレーして繋がっていく、家族、友達の物語。涙腺を締めてから読まないと、大変なことになる。

本書は、2008年6月から2009年9月に、熊本日日新聞など地方紙に順次連載されたものを大幅に加筆、改稿したものだ。



重松清の略歴と既読本リスト



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

実は、この本を読んだ直後は「これは良い、始めて五つ星をつけられる!」と思った。しかし、一晩置いて翌日になると、いろいろ欠点がじわりとにじみ出てくる。それでもやはり面白い本だ。

この本は、芸術的でもないし、哲学的に深く考えさせる本でもない。世界をまたに駆けるわけでもなく、かっこよい人がこだわりの趣味を披露するわけでもない。登場人物は平凡な人で、奇跡が起こるわけでもなく、面白くて腹を抱えるユーモアがあるわけでもない。

確かに内容は軽いが、ついつい感情移入してのめりこむように読んでしまった。久しぶりに十分楽しめる面白い小説だった。しかし、それは、私が歳のせいか昔を思い出す子供ものに弱いからではないだろうか。家族ものが得意な重松清は、芸達者で、浅田次郎ほどあざとくはないが、練達の腕で、ほんわかと丸め込まれてしまったような気がする。

担任の熱血教師水原先生が面白い。何にも分かっていないし、KYでいつもトンチンカン。空回りするどころか、反対方向へ走ってしまう。真剣なだけに始末が悪いが、生徒からも無視されていて、自分でもだめなことは自覚している無害なおぼちゃま。厳しくみれば、現実のどんな教師もみな水原先生と似たりよったりとも思えてくる。


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