hiyamizu's blog

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新川帆立『帆立の詫び状 てんやわんや編』を読む

2024年08月25日 | 読書2

 

新川帆立著『帆立の詫び状 てんやわんや編』(幻冬舎文庫し50-1、2024年2月10日幻冬舎発行)を読んだ。

 

裏表紙の作品紹介

デビュー作『元彼の遺言状』が大ヒットし、依頼が殺到した新人作家はアメリカに逃亡。ディズニーワールドで歓声をあげ、シュラスコに舌鼓を打ち、ナイアガラの滝で日本メーカーのマスカラの強度を再確認。さらに読みたい本も手に入れたいバッグも、沢山あって。締め切りを破っては遊び、遊んでは詫びる日日に編集者も思わず破顔の赤裸々エッセイ。

 

新川帆立のエッセイ集。なんで詫び状かというと、締め切りを破りまくっていながら、エッセイを理由に遊び回っているから。

エッセイの達人向田邦子の『父の詫び状』は、暴君の父親の事情を描いた切ない話だが、帆立さんの詫び状は、才能溢れ、おじさんの鼻の下を延ばさせる可愛げな女の子がアメリカ生活をエンジョイするという楽し気な話だ。

巻頭の8頁はいかにも今時の女の子という帆立さんの写真。

 

第一章は「アメリカ逃亡編」
デビュー作が売れて、メディアや文芸業界との距離の取り方に迷い、混乱の末、旦那さんについてアメリカへ行くことにした。
アメリカでの、エスニックフード、ありのままの自分を受け入れ、愛す「ボディポジティブ」のムーブ、バッグマニアとしてのうんちくなど。

山手線の内側が2つ入る大きさのウォルト・ディズニー・ワールドで楽しむ。

 

第二章は、「あれもこれも好き」
アニメにハマり、バッグ・バーキンを求めてさまよう
(私が、そんなに高いのかと、楽天で検索してみたら、なんと約500万円! 傍に送料無料とあるのが笑えた)

 

第三章は「やっぱり小説が好き」

新人作家が直面する色んな「初めてのこと」に一喜一憂、てんやわんや。

 

 

本書は2021年7月~10月、幻冬舎plusで連載したものに、加筆・修正し、副題を付けたもの。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

帆立さんファンは五つ星、すべてに恵まれた女性に反感がある人は三つ星。

 

「売れるときに、売れるものを書く」と迫られ、必死に応えていた帆立さん。コロナ禍で出会うことがなかった読者から、感謝の言葉をいただいて、感激した。果たしてこんなこと続けていっていいのだろうかと思い悩んでいたが、私の小説は誰かの役に立っている。文学賞なんて別にいらないなと思った。

 

 

新川帆立(しんかわ・ほたて)の略歴と既読本

 

 

 

以下、私のメモ

 

第一章は「アメリカ逃亡編」
デビュー作が売れたのに混乱の末、旦那さんについてアメリカへ。

エスニックフード万歳:あれもこれもと大盛を食べて1年、4キロ太った。

ファッションとボディポジティブ:
服装は全体にカジュアルで軽装、機能的。プラスサイズの人でもショートパンツを穿くし、シニア女性がミニワンピースを着ることもある。自分たちのありのままの姿を受け入れ、愛していこうという「ボディポジティブ」のムーブが10年ほど前から起きている。

バッグ愛好家の見るアメリカ1,2、3:
プラダ、バレンシアガ、ミュウミュウ、ポッテガ・ヴェネタ、グッチ、エルメス、シャネル、ルイ・ヴィトン、ハイブランドのバッグは一通りたしなんだ。アメリカへ来てコーチのバッグにドハマりし、ウンチクが続く。

フロリダでのバケーション:ウォルト・ディズニー・ワールドは山手線の内側が2つ入る大きさ。

 

第二章は、「あれもこれも好き」
アニメにハマりました1,2/ 趣味はなんですか バーキンを求めて

 

第三章は「やっぱり小説が好き」

新人作家が直面する色んな「初めてのこと」に一喜一憂、てんやわんや。

執筆や改稿、校正などは好きで楽しい。しかし、人前へ出なくてはいけない仕事は楽しいのだが、疲れてストレスになる。そして、なにより今年デビューした新人作家に、悪気のないおじさんたちがニコニコして「可愛いって言われたいだけなんだろう?」「あ~東大生って感じですね~」などと言う。

 

ドラマ化脚本を読むと、絶対口出ししたくなる。苦渋の決断として脚本は事前に読まないことにした。しかし、原作利用許諾契約書は大切だと思い、熟読する。

 

幸いなことに、「売れっ子」街道に踏み出した状態だが、作品の内容が浅い、軽い、ウケを狙っている、と語られることもある。普段本を読まない人たちにリーチできたことは良かったが、反面、古くからの文芸マニアやコアファンの皆様には冷ややかに見られている(ような気がする)。将来的な文学賞へのノミネートは遠のいたと感じている。

 

出版各社からは「アラサー女性が主人公のお仕事小説で、できれば映像化できるようなものを」というニュアンスの依頼ばかりがくる。原稿の〆切はきつい。「売れるときに、売れるものを書く」必要がある。果たしてこれでいいのだろうかと思い悩んでいる。

私の小説は誰かの役に立っている。そういう「誰か」のために、これからも書いていけばいい。文学賞なんて別にいらないなと思った。商業作家たちに真摯なあり方に気づかされた。

 

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