hiyamizu's blog

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佐藤多佳子『しゃべれどもしゃべれども』を読む

2013年11月06日 | 読書2


佐藤多佳子著『しゃべれどもしゃべれども』(新潮文庫2000年6月発行)を読んだ。

主人公は、今昔亭三つ葉(こんじゃくてい)、本名外山達也(とやま)、26歳。前座の上の二ッ目の落語家。派手さのない時代遅れの古典落語にこだわる頑固者、すぐ手が出る気短者。女性に対してはやけにうぶ。その彼に落語指南を頼んできた者たちがいるが、いずれも問題児。
吃音で指導できないテニスコーチの従兄の綾丸良、関西から転校してきた生意気ないじめられっ子小学生村林優、不愛想でぶっきらぼうな美人十河五月(とかわさつき)。これに、話下手で解説者をクビになったごつい元プロ野球選手湯河原太一も加わる。

個性が突出し、大きな問題を抱える5人が、いづれも不器用な優しさを持ち、さまざまな出来事を経て、互いに思いやるようになる。

勝田文により同名で漫画化、ラジオドラマ化、国分太一主演で映画化されている。
「本の雑誌が選ぶ年間ベストテン」第一位に輝いた



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

楽しく読め、ちょっと心が温まる。この作者、なかなか筆力がある。
いじめられながら強気の小学生村林がともかくおもろい。
あえて言えば、不愛想な十河は面白そうなのでもう少し書き込んでもらいたかった。強面なのに気が弱そうな湯河原は中途半端で、人が好いだけの綾丸はカットしても良かったかも。

三つ葉の実家が吉祥寺の井の頭公園近くで、おなじみの場所が次々出てくるのがうれしい。例えば、「公園を出て、ほたる橋を渡り、旧玉川上水の脇道を」。

村林が家出して、三つ葉が育てられたばあさんに聞く。

「もし、俺が寒い夜に行方不明になったら、ばあさんは何をまず心配する?」
「毛糸の腹巻をしてるかどうかだね」
・・・ばあさんは、今でも俺に腹巻をさせたいのだ。・・・
急に、それほど、たいしたことは起こっていないという気になった。村林はどこかの児童公園で一人寂しくブランコをこいでいるのだ。よくドラマにそういうシーンがある。なぜか必ずブランコだ。すべり台では陽気すぎるし、砂場では陰気すぎる。


いまだに腹巻が離せない私にはキツイ話だ。ブランコでもこぐか。


佐藤多佳子(さとう・たかこ)
1962(昭和37)年、東京生れ。青山学院大学文学部史学科卒業。
1年間の会社勤め後、
1989年「サマータイム」で月刊MOE童話大賞受賞しデビュー。
1994年『ハンサム・ガール』で産経児童出版文化賞・ニッポン放送賞受賞
1998年「しゃべれどもしゃべれども」吉川英治文学新人賞候補・山本周五郎賞候補、
1999年『イグアナくんのおじゃまな毎日』で日本児童文学者協会賞、路傍の石文学賞を受賞。
2002年『黄色い目の魚』 で第16回山本周五郎賞候補。
2006年『一瞬の風になれ』が本屋大賞、吉川英治文学新人賞を受賞。直木賞候補。
2011年、『聖夜』で小学館児童出版文化賞受賞。
他に、『夏から夏へ』、『神様がくれた指』など。


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