hiyamizu's blog

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百田尚樹『影法師』を読む

2013年11月08日 | 読書2

百田尚樹著『影法師』(講談社文庫2012年6月発行)を読んだ。

下士の家に生まれ、幼い日に目の前で父親を切り捨てられ、遺骸を前にして泣く勘一(後の名倉彰蔵)。中士の家の次男、磯貝彦四郎は、勘一に「武士の子なら泣くなっ」と怒鳴る。その後、下士の勘一は上士のための藩校に敢えて入り壮絶ないじめにあう。そこで、彦四郎と再会し、剣術道場へも通うようにもなる。2人は14歳のとき、刀を合わせて刎頚の契りを交わす。しかし、後に、国家老にまで上り詰めた名倉彰蔵は、剣も才も人並み外れて優れていた彦四郎の不遇の死を知り、その死の真相を追う。
おまえに何が起きた。おまえは何をした。おれに何ができたのか。

百田尚樹の初めての時代小説。

武士の中でも、上士と下士の差は歴然としている。また、嫡男以外は婿入りか、養子縁組することができなければ、妻帯もできず一生部屋住みの厄介叔父で終わる。そのため、下士や嫡男以外は武術、学問に必死で取り組む。

黙々と城下へ向かう5千人の百姓一揆の群れ。町奉行の成田は城門を開く。城代家老に直訴状はわたり、年貢は軽減された。そして、一揆の首謀者の万作たちは5歳児までの家族が磔になり、成田は覚悟の切腹をする。
この時、勘一と彦四郎は刎頚の契りを交わし、勘一は藩のために不可能と言われた大坊潟の干拓のために命を懸ける覚悟をし、彦四郎へ告げる。

単行本未収録の「もう一つの結末」が巻末袋とじに。

初出:2010年5月単行本刊行(講談社)



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

少年時代、文武に抜きん出て輝いていた者が、技や学問が自分より下だが心が強いものの影になり表舞台で活躍させる。下級武士たちの苦悩、強い決意とその美学。

あまりにも出来すぎで、すべてが計算済みという思いがあるが、感動の歴史小説だ。



百田尚樹(ひゃくた・なおき)
1956年大阪市生まれ。同志社大学法学部5年目で中退。
放送作家となり、『探偵!ナイトスクープ』のチーフ構成作家。
2006年『永遠の0』で小説家としてデビュー。2012年100万部を突破。
2013年本書『海賊とよばれた男』で本屋大賞を受賞。
その他、『ボックス!』『風の中のマリア』『錨を上げよ』『プリズム』


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