hiyamizu's blog

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永井明「ぼくに「老後」がくる前に」を読む

2008年04月16日 | 読書
永井明「ぼくに「老後」がくる前に-老人体験レポート-」1999年3月飛鳥新社発行を読んだ。

51歳の著者が、映画のメイクアップの人によりしわだらけの80歳のおばあさんに変身。両耳にスポンジ、前に2kgの重り、手足にも各2kgの重りを付け、ひじとひざをサポーターで固定して、街を歩き、買物をして、人に会う。実体験して初めてわかった高齢化のレポート。

階段の下りが怖い。駅の券売機では小銭を取り出すのにもたついて後ろのビジネスマンから舌打ちされる。
普段は何でもない動作が老人にとっては大変な苦労であることを実感する。相手にされず、ひがみ易く、逆にちょっとの親切が嬉しくなる。
アキばあさんの扮装で、銀座、巣鴨、お台場に行き、熊本まで飛行機に乗ったりする。ノリノリの写真付き。



著者は「ぼくが医者をやめた理由」を書いた医療ジャーナリスト。
この本の最後は、「チャオ、アキばあさん、また30年後に会いましょう」で終わるのだが、痛ましいことに、著者は、2004年56歳で肝臓がんにより死去した。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)。お年寄りがモタモタしていてもイラつかないために、もうすぐ(?)来る老後のあなたを世間がどのように扱うか知るために一読を進めたい。




永井さんは医者だったから、老化の医学的説明がとことどころ入る。2つだけ要旨をご紹介。

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動物種には成長期、生殖期、後生殖期がある。成長期、生殖期には身体のメカニズムはフル回転するが、後生殖期は短くてすぐ死ぬ。
性成熟年齢と、もっとも条件に恵まれた場合の寿命である最大寿命は比例し、ゴリラは8歳と40歳で、チンパンジーは9歳と45歳。人間は13歳で性成熟するから、この計算での最大寿命は65歳ということになる。実際の人間の寿命はこれよりかなり長くなっていて、後生殖期が遺伝の原則を越えて不自然に異常に長くなっている。この結果、ガン、認知症など身体のあちこちにガタが来るのは当然だ。

老化は、昔は生理的衰えとして治療対象にならず、「歳のせいだ」で済んでいた。1961年に始まった国民皆保険制度以来、老化現象に対しても濃厚な治療が行われるようになり、保険財政は破綻した。
――――――――――

私は、無理な延命処置は不要と思うが、老化を素直に受け入れる気持ちにはまだなれない。しかし、医術の進歩により、老化にどこまで対抗すべきかは、確かに個々人の倫理上、経済上の問題となってきているのだろう。






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