hiyamizu's blog

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中村文則『去年の冬、君と別れ』を読む。

2013年11月11日 | 読書
中村文則『去年の冬、君と別れ』(2013年9月幻冬舎発行)を読んだ。

ライターの「僕」は、2人の女性を無残に殺害して一審で死刑判決を受けた木原坂雄大、元カメラマン35歳、に会いに拘置所へ行く。出版社から依頼され彼の本を書くためにやってきたライターに、彼はまっすぐ顔を見ながら「覚悟は、・・・ある?」と問う。

・・・まるできみの中に、僕を入れていくみたいに

「でも、木原坂雄大は、あれほど写真に執着し、女性を二人殺すほど彼女達を」
「ええ、確かに彼は激しい。でもその激しさと、欲望とは別なのです。彼の内面には何も存在しないのですよ。あなたは彼を勘違いしている」

君は誰だ?


被告は海外からも高く評価されカメラマン。しかし、被写体への異常なまでの執着が乗り移ったかのような彼の写真は、見る物の心をざわつかせる。彼は2度にわたってモデルの女性を殺害、さらに現場に火を放った。彼はなぜそんな事件を起こしてしまったのか?それは本当に殺人だったのか?
何かを隠し続ける被告、近づく男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、大切な誰かを失くした人たちが群がる人形師。
だが、何かがおかしい。調べを進めるほど、事件への違和感は強まる。事件の真相に分け入った時に見えてきたもの、それは――?

幻冬舎創立20周年記念特別書下ろし。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

はじまりは素晴らしい。深い闇を思わせるカメラマンの態度。何かありそうなライターのつぶやき。さすが芥川賞作家。

ただ謎を深めるための複雑な構成や、謎めいた登場人物の心の中に入り込むことなく、人物の心理描写がほとんどない。ただ、淡々とストーリーが進められる。
ミステリーはあまり読まない私は、人物のトリックにはすっかり騙されたが、すっきり納得したわけではない。思わせぶりも多い。冒頭からのK2のメンバーとは、結局・・・。



中村文則(なかむら・ふみのり)
1977年愛知県東海市生れ。福島大学行政社会学部卒。作家になるまでフリーター。
2002年『銃』で新潮新人賞、(芥川賞候補)
2004年『光』で野間文芸新人賞、
2005年『土の中の子供』で芥川賞、
2010年『掏摸』で大江健三郎賞を受賞。
その他、『最後の命』、『悪意の手記』、『何もかも憂鬱な夜に』、『世界の果て』、本書『去年の冬、君と別れ』

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