hiyamizu's blog

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「蝦蟇倉市事件1」を読む

2010年10月31日 | 読書2
伊坂幸太郎/大山誠一郎/伯方雪日/福田栄一/道尾秀介著「蝦蟇倉(がまくら)市事件1」2010年1月東京創元社発行、を読んだ。

裏表紙にはこうある。
海と山に囲まれた、風光明媚な街、蝦蟇倉。この街ではなぜか年間平均十五件もの不可能犯罪が起こるという。自殺の名所に、怪しげな新興宗教や謎の相談屋。不可能犯罪専門の刑事や、とんでもない市長、そして無価値な置物を要求する脅迫者―。様々な不可思議に包まれた街・蝦蟇倉へようこそ!
今注目の作家たちが、全員で作り上げた架空の街を舞台に描く、超豪華競作アンソロジー第一弾。


1970年代生れの、今注目の作家たち5名が、海と山に囲まれた蝦蟇倉(がまくら)を共通の舞台として、不可能犯罪を描く競作アンソロジー第1弾。

道尾秀介「弓投げの崖を見てはいけない」
弓投げの崖近くのトンネルで邦夫は自動車事故を起こす。傷心の妻弓子の弱みにつけ込み勧誘、入会を迫る新興宗教団体、心配する大学時代の恋人の刑事隈島。事故の原因を作った3人の若者は証拠隠滅のため邦夫に致命傷を与えて逃げる。車に跳ねられたのが誰かが陽には書かないで、最後が謎のまま終わる。

伊坂幸太郎「浜田青年ホントスカ」
スーパー「ホイホイ」駐車場にプレハブ小屋があり、「相談屋」稲垣が商売している。宿なしの浜田は、宿泊、食事(スーパーの売れ残り)付きの相談屋のアシスタントになる。1週間後、稲垣に代わって相談を受けることになるが、やって来たのは・・・。

大山誠一郎「不可能犯罪係自身の事件」
蝦蟇倉大学の真地博士は警察に協力し多くの不可能犯罪を解決した。10年前の不可能犯罪解決を依頼された博士が、睡眠薬を飲まされて密室殺人の容疑者になってしまう。
昔の本格物のテーストで、実際にはありそうもない論理の遊び。

福田栄一「大黒天」
老舗和菓子屋を営む祖母が、祖父の思い出の大黒様の置物を騙し取られる。輝之と姉は祖父の過去を訪ね歩く。最初から話しの流れは想像がついてしまう。

伯方雪日「Gカップ・フェイント」
蝦蟇倉市長近藤は地元資産家で元レスラー。世界の有名格闘家を集めて格闘大会を開く。大会当日、市長の銅像を制作した幼なじみが10トンもの重さの銅像に踏みつぶされ殺される。Gカップとは、期待を裏切り、グラップリングワールドカップの略だった。

2月に異なる若手作家6名による競作「蝦蟇倉市事件2」が出版された。

最後の執筆者コメント
伊坂幸太郎
この企画の作品と数作読ませてもらった後、すぐに、「僕も競わせてください」と担当者に電話をし、仲間に入れてもらうために急いで書きました。気に入った作品になったものの、まさか三年も経って発表されるとは!

道尾秀介
ラストシーンについて、あの人影は三人のうち誰だったのか?実はこれ、本文をよぉく読んで地図を見てみると、答えは一つに絞られてくるようです。ヒントは・・・。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

ミステリーの出来工合はいまひとつだが、著者達が楽しんで書いている。蝦蟇倉市という共通の舞台で、何人かの登場人物が共通するという競作になっていて、それぞれの著者の味を楽しめる。

やはり、伊坂幸太郎が良い。やけに落ち着いた稲垣、「本当っすか」を連発する浜田のキャラが立っていて、二人の会話が冴える。最後で逆転の連続。厳しい話しをさらりと語る。さすが、伊坂幸太郎。

道尾秀介も、強引な筋立てだが、さまざまな登場人物が入り交じり、混沌のまま、謎を残して終わる。楽しく読めることは読める。


以下、東京創元社の「蝦蟇倉市事件1,2」より著者紹介を引用する。

道尾秀介(ミチオシュウスケ )
1975年東京都生まれ。2004年、長編『背の目』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞。05年に発表した第2長編『向日葵の咲かない夏』で第6回本格ミステリ大賞候補、短編「流れ星のつくり方」で第59回日本推理作家協会賞候補に選出される。07年、『シャドウ』で第7回本格ミステリ大賞を受賞。

伊坂幸太郎(イサカコウタロウ )
1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒。96年、『悪党たちが目にしみる』で第13回サントリーミステリー大賞に佳作入選後、2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビューする。清冽な感性とパズル的な構成が融け合った独自の作風を開拓し、第4長編『重力ピエロ』は大好評を博した。他の著作に『ラッシュライフ』『陽気なギャングが地球を回す』がある。『アヒルと鴨のコインロッカー』で、第25回吉川英治文学新人賞を受賞。

伯方雪日(ハカタユキヒ )
1970年京都府生まれ。京都大学卒。書店勤務のかたわら、執筆活動を行い『誰もわたしを倒せない』でデビューする。

福田栄一(フクダエイイチ )
1977年愛媛県生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)法学部卒業。2003年、「絶体絶命日常冒険小説」と銘打たれたコミカルな快作『A HAPPY LUCKY MAN』でデビューする。緻密な構成と抜群のリーダビリティが印象的な俊英。著作に『玉響荘のユーウツ』『あかね雲の夏』『メメントモリ』『エンド・クレジットに最適な夏』がある。

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