hiyamizu's blog

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『数学トレッキングツアー』を読む

2011年02月06日 | 読書2
東京理科大数学教育研究所編『数学トレッキングツアー』2006年7月、教育出版株式会社発行、を読んだ。

高校生・大学生向けに東京理科大学がおくる数学を楽しむ講座だ。大学で学ぶ数学の内容に直接つながる3つの話題をできるだけ丁寧に解説している。
東京理科大学の生涯学習センター主催の講演をもとに、それぞれの講演者が再構成、加筆したものだ。

第1章 無限をたずねて(集合論)、 執筆者池田文男
第2章 お見合いパーティを主催してカップルをつくろう (離散数学)、 執筆者小谷佳子
第3章 相加平均≧相乗平均(不等式論)、執筆者岡田紀夫
数学とノーベル賞(ノーベル賞にはどうして数学賞がないのか?その他,フィールズ賞,アーベル賞) 執筆者澤田利夫
編集者眞田克典



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

さすがに文化系の人にはお勧めできないが、理工系大学生なら堅苦しい教科書とは違って、数学の面白さを味わえるだろう。遠い彼方の大学生の私でも、あまりにシツッコイところ以外は、楽しみながら読めた。

アーベルについて少々。
2002年、ノルウェー政府が、賞金1億円、年齢制限なしで、毎年選定されるアーベル賞を創設した。アーベルは5次以上の代数方程式にはベキ根による解の公式が存在しないことを証明するが、論文はガウスに無視される。さらに、楕円関数論を完成させるが、コーシーは机に入れたままで、その間にヤコビが解決し発表してしまう。アーベルは貧困と研究で体力を消耗し、27才で亡くなる。その2日後にベルリン工科大学教授の招聘状が届く。
ノルウェーのオスロの王宮公園には、2人の老人を踏みつけたアーベル銅像がある。この2人はガウスとコーシーだと言われる。



以下、いいかげんな理解に基づく私のメモ。

可付番集合のところを読むと、稠密性(密に詰まっている)有理数が、スカスカの自然数と濃度が同じであることが出てくる。これが私がかねから、理論は解っていても納得できなかったことのひとつだ。今回も説明は理解できても、本書が言うとおり、「大変不思議な結果を導いています」ということに終わった。
この本にはさらに、平面上のすべての点の集合の濃度は実数の集合の濃度と同じである、つまり、一次元空間と2次元空間の点が同じだけあることになると示している。無限といっても、可付番濃度と連続体濃度の2種類ある(どこかで聞いたような気がする)。後者が前者より大きく、中間の大きさはないというのがカントールの連続体仮説だ(われながら大胆な決めつけ)。

連続体仮説を証明しよう苦労したカントールは、師のクロネッカーからいじめられたこともあって精神を病んで行った。
結局、ゲーデルやコーエンによって、連続体仮説は正しいことも、正しくないことも、現在の公理的集合論の中では証明できないということが証明された。
つまり、現在の集合論の公理系から連続体仮説は独立であり、現在の集合論の公理系とは異なる連続体仮説を仮定した数学が矛盾なく作りうるということなのだ。ユークリッドの第5公準(平行線は交わらない)が証明できず、非ユークリッド幾何学を作ったように。


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