hiyamizu's blog

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多島斗志之『黒百合』を読む

2022年06月01日 | 読書2

 

多島斗志之著『黒百合』(創元推理文庫、Mた45、2015年8月28日東京創元社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

六甲の山中にある、父の旧友の別荘に招かれた14歳の私は、その家の息子で同い年の一彦とともに向かった池のほとりで、不思議な少女・香と出会った。夏休みの宿題のスケッチ、ハイキング、育まれる淡い恋、身近な人物の謎めいた死──1952年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年ふたりと少女の姿を瑞々しい筆致で描き、文芸とミステリの融合を果たした傑作長編。

 

1952(昭和27)年、六甲の避暑地で、中学生の寺本進、浅木一彦と、倉沢香の3人がa遊び、淡い三角関係となる話。

1935(昭和10)年、ベルリンで、62歳の小林一造、32歳の寺元、30歳の浅木が、謎の20歳の女性・相田真千子と出会う話。

1952年、浅木(父)に連れられて、進は一彦と共に、79歳の小林一造に会う。贔屓の喫茶店<六甲の女王>の話がでる。二人は香の六甲一の邸宅へ行き27歳のやさしい叔母・日登美を紹介される。

以下、昭和15年~20年の倉沢日登美と好きな車掌の男、そして兄の貴久男の話、1952年の中学生3人の話、などと続いていく。

 

 

本書は2008年、作者失踪の前年、東京創元社より単行本として刊行。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

1952年の現在と、戦前の話が交互に語られて、思いを掻き立てられる。

 

3人の中学生の淡い三角関係がよく描かれている。小さな出来事ですぐ心配になって嫉妬し、何かと自分が分が悪と感じる寺元進の焦りが良くわかる。ただしおじいさんには長すぎた。

 

ミステリ要素は、貴久男を殺したのが誰か、後妻に親しくしているのが誰か、そして、相田真千子はなぜドイツまで一人でやって来たか、その後どうなったのか、なのだが、最後の謎だけがミステリアス。

 

 

多島斗志之(たじま・としゆき)

1948年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。広告代理店勤務後、フリーのコピーライター。
1982年、多島健名義で執筆した「あなたは不屈のハンコ・ハンター」で第39回小説現代新人賞を受賞。
1985年『〈移情閣〉ゲーム』(別題『龍のプロトコル議定書』)で本格的にデビュー。
1989年『異人館の花嫁』で日本推理作家協会賞受賞、『密約幻書』が直木賞候補
1990年『クリスマス黙示録』で吉川英治文学新人賞受賞
1991年『不思議島』で直木賞候補。
1998年『海賊モア船長の遍歴』で大藪春彦賞候補。

他、『少年たちのおだやかな日々』『症例A』『離愁』『感傷コンパス』など。

2009年12月19日両目失明を危惧して行方を絶つ。

 

 

寺本進:東京の中学生。夏休みに六甲に遊びに来ている。父は東京電力(旧電燈)勤務。

浅木一彦:浅木家の一人息子。父・謙太郎は宝急電鉄勤務。母はマチコ。

倉沢香:神戸女学院中学。婚外子。

倉沢貴久男:倉沢家の長男。香の父。若くして死亡。

倉沢親也:貴久男の妹・日登美の夫。倉沢家と会社を支配。

倉沢貴代司:倉沢家の次男。デカダンス叔父。仕事をしない31歳。

小芝一造:小林一三がモデル。宝急電鉄を創設し独創的な方策で大会社に。東京電燈(電力)などを創設。

黒ユリ組:戦前の東京にいた不良女学生グループ。リーダーは「黒ユリお千」。

 

矍鑠(かくしゃく)

 

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