伊藤詩織著『Black Boxブラックボックス』(2017年10月25日文藝春秋発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
信頼していた人物からの、思いもよらない行為。しかし、その事実を証明するには―密室、社会の受け入れ態勢、差し止められた逮捕状。あらゆるところに“ブラックボックス”があった。司法がこの事件を裁けないのなら、何かを変えなければならない。レイプ被害に遭ったジャーナリストが、自ら被害者を取り巻く現状に迫る、圧倒的ノンフィクション。
2015年4月3日夜、『Black Box』の著者であるジャーナリストの伊藤詩織さん(以下著者)は、以前から就職の相談をしていた当時TBSワシントン支局長と会食し、泥酔した著者が気づくと、彼が滞在しているホテルの部屋で、犯されていた。
引き続く恐怖と痛みで混乱し、閉じこもり、迷って、友人達に相談し、警察に相談し、最終的にレイプの被害届と告訴状を提出した。しかし、準強姦罪の逮捕状が出たが、逮捕当日に警視庁刑事部長の判断で逮捕見送りになり、さらに不起訴処分となった。
著者は覚悟を決め、「週刊新潮」の取材を受け、検察審査会への申し立てを機に実名と顔を出して記者会見を開いた。審査会の「不起訴相当」の議決後は、日本外国特派員協会でも会見した。
マスコミの反応は鈍く、ネットでの誹謗中傷は続く。そんななか、著者はこの本を上梓した。
まだまだ、レイプに関する法や被害者支援体制は不備で、立証しづらい密室─ブラックボックス─の闇は深い。
参考:「あの人のことば」
事件後、すぐ着ているものはすべて洗濯し、シャワーを浴びた。近くの産婦人科で、緊急で次の朝までに飲むモーニングアフターピルをもらった。しかし、レイプ事件に必要な検査が受けられる証拠採取の道具一式、レイプキットがあれば、ブラックボックスは少し明るくなり、話は違っていただろう。
伊藤詩織(いとう・しおり)
1989年生まれ。ジャーナリスト。フリーランスで、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信する
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
知人、親しい人からレイプを受ける場合が多いという。女性はそんな場合、どうするのか、一度でも考えておくために読むべきだ。米国で育ち、国際的に活躍する著者でも、レイプのショックで混乱し、訴えることを躊躇し、訴訟の途中でも迷うほど、レイプは心身を傷つけるものなのだと思う。おとなしい女性でも混乱する状況の中でも、証拠保全に必要な血液検査、DNA採取が行える支援体制を整えるべきだ。
また、男性も、この本を読んで、いかに暴力が心の傷を与えるかに心すべきだ。レイプ被害者の70%が被害にあっている最中、体を動かせなくなる、拒否できなくなる「擬死」状態になるという。著者に就職をせわしてもらおうという下心があったからといって、許されるレベルの話ではけしてない。ましてや、記者会見で胸のボタンを留めてなかったなどと非難するのは卑怯者の言うことだ。プンプン!
ドキメンタリー事件後の彼(犯罪者)とのメールのやりとりが20ページに渡り続く。リアル感はあるが、冗長。