hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

村山由佳『風は西から』を読む

2018年04月22日 | 読書2

 

 

村山由佳著『風は西から』(2018年3月30日幻冬舎発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

大手居酒屋チェーン『山背』に就職し、繁盛店の店長となって張り切っていたはずの健介が突然、自ら命を絶った。なぜ彼の辛さをわかってあげられなかったのか―恋人の千秋は悲しみにくれながらも、同じく息子の死の真相を知りたいと願う健介の両親と協力し、「労災」の認定を得るべく力を尽くす。だが『山背』側は、都合の悪い事実をことごとく隠し、証拠隠滅を図ろうとするのだった。千秋たちはついに、大企業を相手にとことん闘い抜くことを誓う。

 

居酒屋チェーン『山背』に勤める藤井健介はデートに1時間も遅刻してきた。しかし、伊藤千秋は責めることなく楽しくデートを続ける。健介は本社勤務5年で、繁盛店の店長となり、以来、地獄が始まった。
店舗の売上に対する人件費があらかじめ決められたラインをオーバーすることを<テンプク>といい、店長は<ドック入り>となり本社に呼びつけられて、人格を傷つける激しい吊し上げをくらう。

宮下麻紀は長く店で働くアルバイト。喜多野雅彦は健介と同期の退職者。

 

山岡誠一郎は、『山背』のカリスマ創業者で理想を熱弁する。斉木は営業本部長。波多野は副社長。

千秋は大手食品メーカ『銀のさじ』の営業。中村さと美は同期入社で5年同じ部署の親友。鷹田弘之は理解ある課長。田丸恵美子は千秋の納入先スーパーの売り場責任者で、有益なヒントをくれる。

 

健介の父・藤井武雄は広島で小さな居酒屋を妻・比佐子と経営。

 

佐久間孝彦は千秋たちが依頼した初老の弁護士。

 

タイトルの「風は西から」は奥田民生のヒット曲から。広島では春に吹く西風を「岩おこし」と呼ぶ。作中で健介が好きな曲として何度も登場する。「・・・明日はきっといいぜ 未来はきっといいぜ 魂でいこうぜ・・・」

 

本作品は、上毛新聞など13紙に2016年4月~2018年2月まで掲載されたものに加筆修正。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)


始めの部分で、『山背』での激しい勤務ぶりが続き、読んでいてうんざり。社長の山岡誠一郎に魅せられて信者のようにメチャ働く健介に、やる気のない私は「馬鹿かお前」と言いたくなる。

千秋、武雄、比佐子で山背に戦いを挑んでからは快調なペースで読み進められる。ただ、比較的容易に過労死の証拠データが得られ、山背側はただ逃げ回るだけなので、実際の戦いとは違いが大きいのではと思ってしまう。おそらく今も困難な戦いを続けている過労死の家族は多いのではないだろうか。

 

村山由佳(むらやま・ゆか)
1964年東京都生まれ。立教大学文学部卒後、会社勤務、塾講師。

1993年「天使の卵~エンジェルス・エッグ」で第6回小説すばる新人賞受賞。

2003年『星々の舟』で第129回直木賞受賞。

2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、島清恋愛文学賞受賞
その他、『放蕩記』『花酔い』『天翔る』『天使の柩』『ありふれた愛じゃない』『La Vie en Rose ラヴィアンローズ』『嘘 Love Lies』

 

 

参考文献は、『検証 ワタミ過労自殺』などブラック企業関連の書籍が6冊並ぶ。

 

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